第24話

 今はリッカと、トロールが対峙している。

 トロールの剣がリッカを襲う。リッカは……、躱さない。

 ザックリと切られるが、回復魔法で瞬時に傷を癒している。まず始めに防御と教えたのだが、間違った捉え方をしてしまったみたいだ。

 リッカの笑みを見た、トロールが恐怖で硬直したのが分かる。

 リッカは、短銃を抜いた。


 ――パン……、ドサ


「ぐおおぉ……」


 トロールが、その身を変形させて息絶えた。回復魔法と言うのは、攻撃にも使えるのだな。

 私も回復魔法は使えるが、"再構築"は無理だ。だが、面白いと思えた。

 しかし、異形と思える姿にするのはどうかと思う。肉だるまと表現できそうな姿になっているが? 仮にも聖女の攻撃なんだろう?


「リベンジも果たせました。経験値も得て、レベルアップも凄いことになっています。何でもできる気がします。魔王四天王に向かいましょう」


 主導権を取られてしまったか。まあ、私に戦略眼などない。私の戦術は、特攻・前進のみだ。

 ここは、任せよう。


「四天王と言うが、どんな相手なのだ?」


「まずは、最強と呼び声の高い、火魔性から倒して行きましょう」


「いきなり、最も手強い相手に向かうのか?」


「はい。倒せれば、魔王軍の弱体化が望めます。その後、残りの四天王を一度に蹴散らして、魔王に挑みましょう」


 まあ、そうだろうけど。発想が、突飛過ぎないか?

 私の知識であれば、周囲から削って殲滅して行き、最後に魔王だと思うのだが……。

 どんな戦略なのだろうか。

 まあいい。


「分かった。任せる」


「はい!」


 リッカは、怖い笑顔だ。もはや、獲物を狙う狩人ハンターだな。





 四天王が守っているという砦に着いた。


「炎のイフリートですね。まあ、覚えなくていいです、倒しますので」


 ふむ? それは、強者の言葉だが?

 リッカが、銃口を砦に向けた。

 まだ、数キロメートルの距離がある。なにをするというのか……。


 ――ドパン


 大轟音が響き渡った。まるで、アームストロング砲。いや、戦艦の砲撃だ。銃の反動など、どうなっているのか。

 あ……、地面が割れている。踏ん張っただけなのか……。凄いな。

 そして、二度目の大轟音が響き渡る。


「砦が崩壊しているのだが?」


「まだですよ。ここからが私の再構築魔法になります」


 ほう……。砦を見ると、城壁が暴れ出していた。まるで生物だ。タコとかイカの触手みたいなのが、暴れ回っている。

 魔族達は、混乱の極みに達したらしく逃げ始めた。

 確かに、あれは怖い。理由もなく、石畳が蠢き壁が迫って来たら、まるで迷宮ダンジョンだ。


「魔力の回復まで、後数秒待ってくださいね」


「そんな短期間で、魔力が回復するのか?」


「聖女の称号の効果です。〈魔力回復量:極大〉を持っています」


 素晴らしい。素晴らしい以外の言葉が出ない。あんな威力を日に何度も撃てると言っている。

 もうこの娘が、勇者でいいんじゃないか?


 少し待っていると、悪魔っぽいシルエットの魔族が近づいて来た。



「イフリートですね。排除させて貰います」


「待て、待ってくれ! 降伏する!」


「昨日、街を襲っておいて?」


「謝罪する。賠償金も支払おう!」


 なんだこれ? 魔族の四天王が、聖女に下ろうとしている?

 許されるのか?


 リッカを見る。


「もう、この世界では、最強の一角だな」

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