第23話

 人の街に戻ることにした。

 移動の際は、私のマジックバッグに収まっていた荷物を取り出し、リッカに背負わせる。加重トレーニングだ。まずは、百キログラムのウエイトからだな。

 後で、アンクルウエイトを買い、足に重りを付けてやろう。


 冒険者ギルドと思ったが、リッカの提案で武器防具屋に向かう。

 リッカは、ライフル銃を選んだ。私の銃と変わらないな。


「それは、長距離用だぞ? まず、近接戦闘からじゃないか?」


「それでは、魔力の弾を撃てる短銃も購入します」


 私としては、近接戦闘を覚えて欲しかったのだが。ナイフも購入しておく。

 それと、服だ。迷彩服とブーツを購入した。とても似合っている。

 支払いは、私が済ませた。

 リッカが頭を下げる。


「さて、トロールとの再戦だな。二週間の特訓の成果の確認だ」


「……」


 む? 不満があるのか? トラウマになってしまったのかもしれない。

 だったら、なおさら克服させねば。

 ここで、悲鳴を拾った。


「ぎゃ~! 魔物が攻めて来たぞ~!」


 街中から悲鳴が聞こえ始めた。

 私達は、頷いた。


 店の外に出る。


「ゴブリンと、コボルトの集団だな」


 ――パン、パン、パン、パン、パン、パン

 ――ドサ、ドサ、ドサ、ドサ、ドサ


「一匹逃しましたね。マガジンを交換して追撃します!」


 リッカ……、躊躇いがない。頼もしいな。


「射撃訓練の経験があるのか?」


「ゲームですよ」


 ほう? そんなゲームがあるのであれば、私も遊んでみたかったな。まあ、私は実弾訓練を熟していたので、ゲームをする必要もなかったが。


 リッカは、短銃に変えた。

 撃たれたゴブリンが、絶叫を木霊して息絶える。


「……弾か? 急所を外しているが、絶命している? 毒を付与?」


「過剰な"回復"を付与した、魔法の弾丸です。しかも、魔力が尽きない限り撃てます。以前から考えていて、ステータスの割り振りを変えました。もう、誰もわたしを"聖女"と呼ばないでしょう」


 私の分からない、レベルとステータスの話か。

 まあいい、成長しているようだ。


「あ、オーガ……」


 前方に、冒険者を蹴散らす、巨人がいた。


「あれは、危ないな。私が相手をしよう」


「いえ、わたしに任せてください!」


 二週間走らせただけだが、リッカは随分と自信をつけたのだな。



 リッカと、オーガの戦闘が始まった。

 不意打ちで、オーガの右腕を撃ち抜いたのが大きい。

 オーガは、初手でその攻撃力の大半を失っていた。


 リッカは、足を中心に狙い撃って行く。オーガは、なにもできずに、選択肢を奪われて行った。

 だが、投石が来る。

 リッカは、その投石すら、銃撃で砕いた。


「今の弾は?」


「"回復"の上、派生した"再構築"になります。元の形を"崩す"と考えてください。これは、生物以外にも効果があります。物質であれば……、わたしは操れます!」


 走らせただけだが、この二週間で何が起きたのだろうか?

 リッカは、まるで別人だ。

 銃が大きいのか?

 いや、これが眠っていた才能なのだろうな……。

 私にはない、特殊能力。羨ましい。


 手足を撃ち抜かれ、動けなくなったオーガにリッカがライフル銃を向ける。


 ――パン


 オーガの頭が撃ち抜かれ、動かなくなった。

 ここで、冒険者達から大歓声が上がった。





 街の被害は軽微だった。

 オーガを失った、魔物の集団は逃げ出したのだ。


 今回の防衛線の、第一功績者として、リッカが選ばれる。まあ、当然だな。

 報酬として、リッカは最高級のライフル銃を望んだ。

 領主は、二つ返事で用意する。

 それと、永住権を用意すると言って来た。


 私はというと、ゴブリンを数匹倒した程度なので、銀貨2枚となった……。まあ、いいのだけど。


「ヘーキチさん、トロールの再戦に行きたいです。今なら勝てる気がします」


 単独行動している、トロールなど少ないというのに。

 しかし、自信に満ち溢れて来たな。いい傾向だ。


 私達は、領主の懇願を無視して、街を後にした。

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