第26話

「リッカあねさん。次はどちらに? 案内しまっせ?」


 ガルーダも腰が低いな。それと、姐さん固定なのか?

 魔王が、『姐さん』と呼ばせていた?


「ガルーダ……。精霊界に戻っていなさい」


「サー、イエッサー!」


 ガルーダが消える……。


「さて、次は、水か土だよな?」


「う~ん。わたしにとって、一番相性のいいのが土であり、悪いのが水なのです」


 ほう……。先を見通しているな。

 私なら、罠を噛み破って敵に刃を突き付けるのみだが。


「無理に相性の悪い相手と戦うこともあるまい。土に行こう」


「へぇ~。ヘーキチさんでも、そんな考えをするんだ」


「……なら、魔王城へ向かうか?」





 協議の末、土属性の砦に向かう事になった。

 今は、リッカの意見を尊重しよう。


 野を進む。

 魔族領なので人里もない。人影も私達だけだ。

 魔族や魔物を見かけたりもするが、避けられている。というか、逃げている。


 そして、目の前に砂漠が広がった。


「土の四天王は、砂漠に住んでいるのか?」


「……前情報では、岩石地帯だったのですが。地形を変えましたね。無意味だというのに」


「距離は?」


「ここから、10キロメートル……かな。ダメですね。一度、飲料水を取りに戻りましょう」


 ふむ……。地形を変えて、防衛戦を張って来たか。

 リッカの怖さも伝わっているな。


「ガルーダに乗せて行って貰い、時短してはどうだ?」


「逃げますね……。この、砂漠のフィールド内なら何処にでも移動する相手です」


 凄い情報量だな。


「勇者は、どうやって倒そうとしていたのだ?」


「う~ん。挑発して、おびき寄せるとか言っていました。でも、もう無理ですね」


 土の四天王を、始めに倒すべきだったんじゃなかったのか?

 この広さは、骨が折れそうだ。


 戻りながら、作戦を練る。

 私としては、短期決戦だ。長期戦など、時間の無駄だ。

 だけど、リッカは長期戦を提案して来た。


「砦を徹底的に破壊します。そうすれば、土の四天王は、魔王城へ向かうでしょう。私達は、雑魚の掃討後、土の四天王が住めない状態にすればいいだけです」


 それは、ただの破壊者ではないか?

 危ない思想だな。


「その砦には、戦えない者もいるのだろう? 歯向かって来ない者に手をかけるのは、気が引ける」


「ヘーキチさんでも、そんな思考をするんですね……」


 私をなんだと思っているんだ?


「私は、猟師だ。いや、狩人だな。人に仇名す獣を狩るのはいいが、殺戮は望まない」


「うふふ……。あはは……」


 リッカが、怖い笑顔で笑い出した……。





「イフリートに地面を温めさせて、ガルーダにハリケーンを起こさせる?」


「うむ。そうすれば、高気圧が生れて、大気が不安定となり、魔族領に雨が降るだろう。そもそも、砂漠と言うのは、赤道付近に発生する偏西風が生み出すモノだ。それを、魔力で再現しているというのであれば、魔力が尽きるまで環境を変えるのがいいだろう。魔力量の勝負なら、リッカに敵う者などいない」


「ヘーキチさんが、科学を語っている……」


 私をなんだと思っているんだ?

 高校くらいは、出たのだぞ?


 リッカの反対もなく、すぐさま実行となった。

 リッカが精霊を召還する。


「イフリート、ガルーダ。頼んだわね」


「「サー、イエッサー!」」


 信頼関係も厚いようだ。


 ――ゴ~~~~


 目の前で巨大なハリケーンが出来上がる。これ、カテゴリーはいくつだ?

 イフリートとガルーダは、リッカの魔力を使って頑張っている。

 頑張っているが……。大きすぎるぞ?


 その日、魔族領が水没した。

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