第4話

 冒険者ギルドで換金を待つ。

 この作業は、私には苦手だ。

 三人に任せる。

 その間に食事を済ませる。

 量的に、三人前を平らげた。ちなみに私の主食は肉だ。


「ヘーキチさん。一人頭、金貨10枚になりました」


 金貨は、日本円にすると100万円くらいだ。今日だけで、4000万円を稼いだのか。

 金貨の入った袋を受け取るが、そのまま冒険者ギルドに預けた。

 襲われたり、盗まれたりはしたくない。銀行というか、預金だな。預金額は……、面倒だ。後にしよう。


「それじゃあ、解散とゆうことで。今までありがとう」


 三人が、残念な顔をする。


「ヘーキチさんは、この後どうするんですか?」


「熊退治だが? 絶滅させる気でいる。そうすれば、このウィアイスの街は平和になるのだろう?」


 ついて行けないとばかりに、三人はお別れの言葉を言って帰って行った。


「さて、明日からまた単独ソロか……」


 私の独り言に誰かが反応した。

 その者が近づいて来る。

 獣人の若そうな女性だった。獣耳が良く似合う。

 そういえば、この世界に来た頃は、亜人に驚かされたな。もう慣れてしまってはいるが。


「御高名なヘーキチさんですよね。少しお話を聞いて貰えませんかニャ?」


 私に話しかける度胸があるのか。まあ、震えているが……。





後援者サポーター? 物資の運搬や食事の世話をする? 聞いた事のない職業だな?」


 再度、食事を頼んで、食べながら話を聞く。


迷宮ダンジョン探索にて活躍する職業ですニャ」


 迷宮ダンジョンは、一回で凝りている。私の野生の勘が、働ない環境だったからだ。

 丸一日、壁とか床を壊しながら進み、魔物を屠ったら、出口が現れた。あれは、何だったんだろうか?

 迷宮ダンジョンを避けていたので彼女の職業を、知らなかったみたいだ。この世界は、まだまだ広いな。


「特技は? 自己アピールでも構わん」


「〈暗視〉と、〈忍び足〉がありますニャ……」


「物資の運搬は? マジックバッグはあるのか? もしくは、魔法かスキルか?」


「……ないですニャ。そこで相談なのニャ」


 私に話しかけて来た理由が分かった。

 私は、ウェイターに『すぐに食べられる食事』を追加注文した。

 シチューが運ばれて来る。


「まずは、食べろ。話はその後だ」


 目の前の獣人は、涙を流しながら食べ始めた。

 資金不足だったみたいだ。


「食事が終わったら、装備を整えに行くぞ。まずは平らげろ」


 目の前の獣人が、驚いた表情をする。


「パーティーに加入させてくれるのですかニャ?」


 なんのために奢ったと思っているのか。


「恩を感じたなら、これから返せ。それと……、名前を教えてくれ」


「失礼しました。ミルキーですニャ。よろしくお願いしますニャ」


「私のパーティーはきついぞ? 覚悟はあるか?」


「餓死するよりは、チャンスにかけたいですニャ……」


 理由としては、十分だ。最高と言える。

 明日からは、ミルキーと狩りに出かけよう。

 私は、ギルドで売られている、最も高価なマジックバッグを購入した。

 ギルド職員が震えている。高性能であり、高価すぎて売れ残っていた物だろうに。


「ど、どの方が『所有者』となられますか?」


「こちらの、獣人の女性だ。名前は、ミルキー」


「……はっ、ニャ?」


「ちょっと、お待ちください! 所有者登録をすると、他の人には使えなくなるのですよ?」


「私のパーティーのサポーターなんだ。これくらいは持って貰いたいと思う」


 ギルド職員が倒れた。貧血かな?

 それとミルキーは、立ったまま口から泡を吹いていた。戻さなかったのは、褒められる点だな。

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