第3話
今度は、ジョブスからだ。
「こいつは、この辺を荒らし回っている、熊の魔物なんですけどね。ヘーキチさんにかかると、雑魚ですね~」
雑魚と言われてもな。狩る分には問題ない程度だ。だが、不意打ちを食らえば、私でも怪我を負う可能性はある。十分な脅威として相対しているんだが……。
それと、荒らし回っているのか? ギルドで喜ばれたのは覚えているが。
「もう、十匹くらい狩ったぞ? まだいるのか? 群れているのか? それと、他の冒険者も狩っているのだろう? そうなると、相当数いそうだな……」
「狩れるのは、ヘーキチさんだけですよ? 普通の冒険者だとパーティーを組んでも相討ちくらいでしょうね。それと、狩れたとしても、素材としての価値のない状態が普通なんですけどね」
どんな狩り方をしているんだ? 思いつくのは、毒だが……。
狩りをして、食べないという発想が、私には理解できない。
「ふむ。明日からは、熊狩りをしようか……。この四人なら群れを殲滅させることも可能だろう」
もっと早く教えて欲しかったな。害獣だったのか。
依頼があれば、優先して駆除したものを。
「「「いえいえいえ……。ミスリルラビットで豪遊したいです!」」」
三人共同じ意見のようだ。戦闘の息は合っているのだが、毎日狩りをしたい私とは合わない。ここまでかな……。
まあいい。私一人でも、街周辺の森であれば問題ない。
「そうなると、パーティーは一次解散としようか」
三人共、残念と安堵が混じった表情を浮かべる。
「ヘーキチさんは、資金をなんに使っているのですか?」
シャドウからだった。
「食事代、宿泊代、武器防具の整備……くらいか? 残った資金は、孤児院などに寄付だ。残高は……、分らん」
三人が、ため息を吐いた。
「もう、貴族位を買えそうですよね?」
この世界では、貴族位を買うのが最終目標なのか?
「手持ちは、ほとんどないと思うぞ? まあ、数えていないだけだが。孤児院の子供達は、大食漢なんだ。それと……数が、200人を超えている。新しい施設を建てているくらいだ」
「ここは、辺境ですが、都市部までヘーキチさんの噂が出回ってますね。孤児院は、パンクしそうだ」
そうなのか? 急激に数が増えているとは思ったが。
孤児が辺境の街に集まって来ている?
「年長者には、私が自ら指導して、狩りの基礎を学ばせている。後数年で、街に貢献してくれるようになるさ。もう集団戦なら熟せるくらいだ。本当に子供の成長には目を見張るものがあるよ」
「貴族に興味がなく、子供好きなんですか~? 女性は作らないくせに~」
私になにもしない生活など耐えられない。
「私よりも優秀な女性がいたら、プロポーズをしようと思っている」
「そんなの、剣聖とか弓聖、魔聖でしょ? 探すんなら、魔王討伐にでも向かってくださいよ! 勇者を倒して、ヘーキチさんが勇者になれば、選り取り見取りですよ~」
「……勇者パーティーか、一目見て興味をなくしたな」
数ヵ月前を思い出す。
あれは……、雑魚としか言いようがなかった。
なにが勇者や剣聖だ。剣を素手で折ってやったのはいい思い出だ。
全員が黙ってしまった。
それにしても、貴族になって、私になにをしろというのだろうか?
私は、狩りがしたい。
そして、満腹まで食べる子供達を見るのが幸せな、アラフォー男だ。
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