第16話 禍中見舞い

  「コロナ禍中お見舞ひ申しあげます」を暑中見舞ひの代はりとなさむ(医師脳)


 例年なら〈暑中見舞〉の時期なのだが、令和元年の暮れからマスクを外せないので、季節感が狂ってしまう。


 動画付き暑中見舞いメールが、盛岡の知人から届いた。


 小型機の免許を持っていたと聞いてはいたが、さすがに傘寿を過ぎた今はお子さんに操縦を任せて撮影するのが楽しみらしい。


 岩手山を斜め上空から撮影したもので、二つの火口がよく見えている。

 緑色の西カルデラと褐色の東カルデラの両方とも(周囲はギザギザで)ビール瓶の王冠を裏返したようだ。

https://drive.google.com/file/d/1uF2_7rn6XnErG5iMUlkkSnwUWc7NESs-/view?usp=sharing


     *     

 

 メキシコ産コロナビールが生産を停止。

「コロナビールス」に発音が似ており、風評被害が出たからだとも聞く。


     *


 東北地方戦略本部の一室。

「巌鷲山の山頂で、二つの巨大な王冠を発見しました」と先遣隊が報告している。

「王冠が二つ? 巨大なコロナが並んでいる基地なら、我々の敵ではあるまい。岩手県への侵攻は中止だ」

 司令官は(全身のギザギザを震わせながら)作戦変更を告げた。


 それに従い、無数の〈新型コロナウイルス〉も天空へと飛び散った。

 ――と全くの与太話だが、なぜか岩手県では当時「コロナ・ゼロ」記録を更新中だった。



 末筆ながら、改めて……。

「暑中お見舞い申し上げます」


(20220801)

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