第15話 ハンデの効用

  世のなかに藤井聡太は多かれど五冠を得しは唯一君なり(医師脳)


 藤井聡太五冠は負けず嫌いらしい。

 …が「勝ち負けより将棋の本質に迫りたい」とも。

 その気構えが凄い。


「裸玉」なる究極の駒落ち戦。

 これならば、藤井五冠にだって勝てるかも……。


 囲碁では「置碁」と言い、下手が黒石をいくつか置いて対局する。


 ゴルフなら打数で、競馬や競艇なら重りで加減する。

「ハンデ戦」と称するそうだ。


 ――ハンデキャップとは?

「機能障害や能力障害に起因する社会的に不利な状態」と人権啓発用語辞典には記載されている。


 その視点に立てば、老人とは「加齢によるハンデを持つ姿」と理解できよう。


 認知症の人ならば「認知機能にハンデを持ちながら一生懸命に生きようとする姿、それができずに困惑している姿」か。


 認知症に見られる周辺症状はBPSD(行動・心理症状)と呼ばれ、問題行動とも認識されてきたが……。

「問題を起こしたくて、訳の分からない行動をしている」のでは、決してない。

「不安な状態を何とか周りに訴えたい」と、本人が一番困っている状況なのだ。


 これを欧米では「チャレンジング行動」と呼ぶ。

 そこに弱者を見下す視点はない。

 社会全体でハンデを利用しあい「弱者と同じレベルに立とう」とする姿が見える。 

 そのうえで適切なサポートを工夫する、という何とも優しい社会だ。


 周りを見回すと既に「青信号で横断歩道を渡り切れない」とか「バスの乗り降りが大変だ」とか、高齢者からは諦めも聞こえる。

 いずれは加齢によるハンデを持つ人々が街中にあふれ、何をするにも手間取るはず。

 その時に備え、スピード優先の現代社会をペースダウンしては?

 ……と老いの繰り言。


(20220701)

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