第19話  アランの落胆

「カミ-ユ!!君がミレーユと絵師に刺客を送ったというのは本当か?」


 はぐれ魔法使いの剣士のクライヴ・ロゥを送った次の朝、アランが我が家に転がり込んで来ましたわ。


 あたくしは、クライヴが成果を持ってくるのを待つ間、お父様が連れて来た新しい絵師に肖像画を描かせておりました。

 今回の絵師は、元宮廷絵師でとても年寄りでしたわ。

 でも、腕はピカ一と評判の絵師でしたの。


 あたくしは、アランの声を聞いて一気に不快になりましたわ。


「あら、婚約者に逃げられたアランじゃないですか~!!」


「刺客を送ったって!?」


「はい。送りましたわ」


 あたくしは、音楽室にアランを呼び出して二人で話すことにしたのです。


「場所は分かっているのか!?」


「風の魔法が使える剣士ですって。だから、そんなに難しいことではないそうですわ。」


 アランはそれを聞いて、ホッとしてましたわ。


「魔法使いだって!!?僕らには目に見えない精霊を操る人たちじゃないか!!

 彼らのほとんどは、神殿所属だぜ。

 神職に準ずる人が、そんな仕事を受けるわけがないよな。カミーユ!!甘いな」


 あたくしは盛大な溜息をつきましたわ。


「所属してない人もいますわ。その人はお金も必要でしたの。だから、お金の為なら何でも致しますわ」


 アランはうっ!!と言葉を詰まらせていました。


「時間の問題ですわよ」


 あたくしは冷たく言いましたわ。


「お前は冷たい女だな!!実の妹を平気な顔をして殺せるなんて!!」

「あたくしが殺すわけではありませんもの。あたくしを利用した二人がいけないのです。あたくしのプライドをズタズタにして」


 あたくしは、扇をピシャリと閉じて言いましたわ。

 アランはあたくしを見て、大きく息をつきました。


「アラン……あなたこそどうするのです?」


「えっ!?」


「ミレーユとあなたの結婚は、家同士の政略的な意味もあるのでしょう!?

 我が伯爵家は、かつての勢いはありませんもの。従弟のユリウスに渡すまでは、体面を保ってはいますが。商人の家のあなたとの結婚を許す等、相当ですわよね」


「言ってくれるね~~確かに金銭援助も言われたけどさ~僕的には、清楚なミレーユを気に入ってたんだよ」


 アランは落胆して言いました。

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