第20話  妹の髪、絵師の右腕

 五日後にとんでもないものを持って、魔法剣士だというクライヴが現れましたわ。


「お嬢様。御所望のモノを持って参りました」

「まぁ……それは何です!?」


 クライヴは美しい笑顔で、言いましたわ。


「妹姫の髪と、絵師の右腕をお嬢様に捧げます」


 クライヴはあたくしに、袋を投げてきましたわ。

 あたくしは、恐る恐る袋の中を見てみました。


 その中には、三つ編みに編まれた薄い茶髪の髪と、切り取られた男性の肘から下の手が入っておりました。

 エグさにあたくしは、思わず吐きそうになりましたわ。


「お嬢様の望んだことでしょう!?その反応はあんまりです」


 クライヴは褒めて欲しかったのでしょうか。


「いいえ、それで……彼らは何処にいたのです!?」


「ヴィスティンを東に出た小さな村です。

 近くになムンノという街がありまして、銀の森が割と近いんです」


「え!?」


 クライヴは何を言いたいのでしょう。


「神の近くで殺生は難しかったのですよ」


「はあ!?命は取ってないってことですの?」


「でも、社会的には抹消しておきましたよ。絵師は二度と絵を描けないように腕を切り落としたし、妹君は女の命である髪を頂きました」


 あたくしは、持っていた扇を落としてしまいましたわ。


「それでは、生きてる方が辛いではないですか」


「それがお嬢様のお望みだったのは?」


 クライヴはあくまで、ニッコリと美しすぎる顔で、笑いながら言いましたわ。


 あたくしは、クライヴのあまりの不気味さにゾッとしました。

 そして、用意してあった最高金貨をクライヴに渡して、言いました。


「もう結構ですわ!!それを持って、早くあたくしの前から消えなさい」


「仰せのままに。お嬢様」


 クライヴが消えると、あたくしは気分を変えることにしました。


 これで、エドワゥはもう絵が描けなくなったのですわ。

 ミレーユは恥ずかしくて、しばらくは外に出られないでしょう。

 直ぐにお金が尽きるでしょうね!

 お腹がすきますわ!

 ザマァですわよ!!


 あたくしは、笑いが止まりませんでしたわ。

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