第22話

「ごめんね」


「ううん、嬉しいんだよ?ありがと。ほんとに。けど、京香でよかったの?」


「もちろんだよ、こんなに嬉しいことはないよ。むしろ、京香こそ僕なんかでいいの?」


「いいんだよ、ヒロくん面白いしね(笑)」


「どっちかっていうと、面白さには欠ける方だと思うけど」


「素朴に面白いから、大丈夫(笑)」


「それって、笑わせてるんじゃなくて、笑われてるんじゃない?」


「力量ないのにウケるって最高だよ、って昔テレビで芸人が言ってた(笑)」


少し黙ってみた。


怒ってる風に見せる為だったんだけど、今の僕は何を言われても怒らない。


そんなそぶりにも気づかずに、京香が話を続ける。


「けど、こんなことになるなんて、思わなかったなぁ」


「そうだね。あの時追いかけて本当に良かったよ」


「奇跡だよね。初めてあのチャットに行ったんでしょ?京香だって3回目だったからさ」


「そうだね。チャットの部屋もいっぱいあったしね」


「追いかけてきたのも、ね」


「いや、あれは必然だよ笑 京香を探しにいったから。それに、ほとんど知らない者同士がこんなすぐに付き合うのも奇跡だよね」


「ほんとそうだよね。京香たち、何にも知らない者同士だもんね」


「こんなトントン拍子、なんかチャラチャラした者同士みたいだね笑」


「そうだね。そんなことないんだけどなぁ」


「わかってるよ、僕だってそう」


「わかってるよ、言わなくても(笑)」


「うん。ゆっくり時間をかけて、少しずつ知っていこうね」


「ボロが出ないように頑張らないとダメだ(笑)」


「ボロ出るの?」


「いや、出るならもう出てると思うよ(笑)京香、鈍臭いからさ(笑)」


「そうだよね笑」


「なにさ!見てもないのに!」


「だって自分でいつも言ってるじゃん!」


「自分で言うのと、他人に言われるのは違うの!」


「難しいなぁ」


「京香たち、分かり合えるよね?会えなくても、大丈夫だよね?」


「きっと、大丈夫だよ。会って分かることは沢山あるし、会っても会わなくても分かることも沢山あると思うけど。けど、一番大切なことって、たぶん会えない時に気付くんだと思う」

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少年ビタミン 黄一郎 @nayuta_s

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