第17話


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健太さん、ありがとうございます。


メールしっかり受け取らせて頂きました。


お話はヒロくんから伺ってます!




とんでもないです!


宜しくお願いしないといけないのは、

こっちの方です。


この度はありがとうございました。


失礼いたします。

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6限終わりにメールが来たらしい。


返事はしなくていいって言ったのに。




掃除も終わり、がらんとした教室に僕たちは2人でいた。


グラウンドから聞こえてくる、聞き取れない部活の掛け声なんかを耳にすると、今日もいつもの一日が終わるんだな、とうらわびしい気持ちになったりする。


すみっこの一番後ろの席に座りながら、隣で健太がニヤニヤしている。


よかったじゃん、くらい言ってくれれば良いのに。


こうも思わせぶりな笑顔を見ると、嬉しいような、気恥ずかしいような、不思議な気持ちになる。


まだ健太の携帯を握りしめ、極端に首を下に垂らしたまま画面から目を離さない僕に対し、「丁寧な子じゃん、良いと思うよ」とようやく声をかけてくる健太。


目線を上げ、健太をくっきり見つめながら、

「そうだね、すごく良い子なんだと思うよ。まだ知らないことも多いけどね」と答える。


健康に張った彼のエラが首筋に夕陽の影を落とす様を見つつ、我ながら誠実な返事ができたと思う。


まだインターネットが普及し始めた頃の話だ。ネットで出会うなんて言葉も多分なかったし、理解されないこともきっとたくさんある。


だけど、もう健太に対しては斜に構える必要も恥ずかしがる必要もないと思って。


真正面からそう答える。





不安も多いし、先のことなんてわからない。


けど、京香に対して正面から向き合おうとしていること。


別に、応援してもらいたい、とは思わない。


アドバイスをしてもらいたい、とも思わない。


けれど、健太には知っていてもらいたい。




そうだ。


まだわからないことばっかなんだよ。


だけど。


こうやって、健太に丁寧な返信メールをしてくるくらいなら。


たぶん幻滅はされてないんじゃないかな、と考える。




次の火曜日を思うと、落ち着かない。


京香は僕にどんな言葉をかけてくるんだろう。


実は幻滅させてしまっていて、返事が来ない可能性もまだ少しあるんだろうけど。


京香からすれば、そもそも幻滅も何もなくて、得体の知れない、だけどほんの少し気の合いそうな他人の顔写真を見た、ただそれだけのことなのかもしれないけど。


何となく、さっきの柔らかいメールを、京香の少し他人行儀なメールを見る限り。


きっと。


きっと、僕たちは、大丈夫だ。




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