第7話 新メンバー登場!(1)

「待機中でくつろいでいるところ悪いけど、邪魔するよ」


 ちょうどランチが終わってのんびりとしてた頃、作戦室に緑川本部長が高校生ぐらいの年齢の少女を従えてやって来た。それぞれの席でくつろいでいたメンバーは、立ち上がって出迎えようとしたが、緑川本部長が「いいよ、いいよ」と手の動きで制した。


「こんにちは、本部長。その少女はどなたですか?」


 レッドが立ち上がり、二人を迎える。


「それは今から説明するよ。この娘のことで頼みたいことがあるからね」


 本部長と少女はレッドの席の横に来て、メンバーに向かい合う。


「実はこの娘を今からサイコレンジャーのメンバーに入れて欲しい。

 メンバーと言っても、ずっとではなく、一週間の短期で考えている。まあ、研修生として扱って貰えば良いから」


 研修生と言われても、みんな戸惑った。メンバー達は研修なんてしたこと無く、採用テストを受けてAIに選ばれただけだったからだ。


 本部長から、自己紹介してと言われて、少女が一歩前に出る。スラリとしたモデル体型で、ショートカットの美少女だ。アイドルと言っても通用するだろう。


「初めまして! 今日からお世話になります、緑川円(まどか)、グリーンです。現在高校二年生で料理が得意です! 先輩のみなさんのお役に立てるように頑張りますので、よろしくお願いします!」


 少女は明るく自己紹介すると、ぺこりと頭を下げた。


「もしかしてその娘は……」


 レッドが少し驚いた顔で本部長に訊ねる。


「もしかしてって、どう言うこと?」


 ブルーはレッドが驚いている意味が分からず、横に座るブラックに訊ねた。


「あんたマジ? ホント分からないの?」


 ブラックは呆れたようにそう言った。


「お察しの通り、この娘は私の孫娘なんだよ」

「ええっ! そうなんだ! 全然似て無いのに!」


 驚いて大きな声を出してしまったブルーは、本部長に睨まれた。


「円は私の若い頃の生き写しだって言われてんのよ」

「ええっ……それは有り得ない、痛てっ!」


 ブルーはブラックに後ろから思いっきり蹴られてしまった。


「あの、サイコレンジャーに入ると言うことは、彼女も何か超能力を持っているんですか?」

「もちろん。円、みんなにプレゼンしてやって」


 レッドの質問を待っていたかのように、本部長は胸を張る。


「はい、私の超能力は『姿なき究極乙女(ステルスビューティー)』です!」

「姿なき究極乙女(ステルスビューティー)?」


 五人のメンバーが同時に声を上げた。


「まあ百聞は一見に如かず、ですから見ててくださいね! ステルスモード」


 グリーンがそう叫ぶと、見えていた肌の部分が透明になった。着ている服はそのまま人の姿を残しているのに、肌の部分が見えないのだ。


「透明人間になる能力なのね」


 ピンクが感心したように呟く。


「真心さん、正解です! そう私の超能力はステルス機能なのです!」


 みんな席を立ち、グリーンに近付き、不思議そうに眺める。ブルーも一緒に見ていたのだが、本当に透明で、どうなっているのか不思議で仕方なかった。


(もし、この透明の部分に指で触れたらどうなるの? もしかして指も通り抜けるの?)


 そう考えた瞬間に、ブルーは人差し指をグリーンの顔が有った辺りに突き出していた。本当に深く考えずになんとなく突き出したのだ。


「いやあああああ!」


 ブルーの人差し指が柔らかい何かに当たった瞬間、グリーンが悲鳴を上げた。


「えっ、なになになに?」


 ブルーは自分がしたことの結果に驚き、人差し指を立てた状態のまま狼狽える。


「唇に触られたあー」


 グリーンは泣きながら姿を現す。


「あんた何やってんのよ!」

「お前、それ痴漢だぞ!」

「そんないやらしい真似するなんて、大地君のこと見損ないましたわ」

「いや、違うんだ。そんなつもりじゃなく、どうなっているのかなって……」


 みんなから責められ、ブルーは土下座する勢いで謝り倒して、なんとか許して貰った。


「透明になれるのは分かりますが、服が透けないんじゃ使いようが無いんじゃないですか? まさか裸になる訳にもいかないし」

「それも考えておるわ。円」


 本部長がレッドの疑問に応えて合図すると、グリーンが「ステルスモード」と叫び透明になる。だが、さっきと同じように、服は残ったままだ。


「ステルススーツオン!」


 姿なきグリーンがもう一度叫ぶと、服まで消えてしまった。


「円には戦闘スーツが二種類あるのだ。一つはみんなと同じ戦闘スーツ。もう一つは透明の特殊素材を使ったステルススーツなのだよ」

「そうか、今はステルススーツを着ているんですね」

「そう。これで円の能力を最大限引き出せるのだ」


 イエローの言葉に我が意を得たりと、本部長が解説する。


「あっ、あの、もしステルススーツを着ている間に、普通の状態に戻ってしまたらどうなるんです?」


 ブルーは手を上げ、思い付いた疑問をまたしても深く考えずにそのまま口に出していた。もしかして、グリーンが全裸の姿になってしまうんじゃないかと思ったのだ。


「あんたはもう、何聞いてんのよ! ホントそんな馬鹿なことだけは気付くのが速いんだから!」


 ブルーはブラックに後ろから張り倒された。


(どうして、若葉は俺のこととなると、こんなに怒るんだろうか? ハッ、もしかして、俺が円ちゃんに関心を持っているのが悔しくて嫉妬してるのか?)


 そう考えた瞬間に視線を感じたので、ブルーは前を見る。そこには憐みの目でブルーを見つめながら、ピンクがゆっくりと首を横に振っていた。


 その後、グリーンは研修生として、サイコレンジャーの仲間に加わった。可愛くて明るい性格のグリーンをみんなは妹のように可愛がり、楽しい日々を過ごした。

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