第6話 ピンクの過去(3)

 数分前。ピンクの家の前で、レッド達サイコレンジャーのメンバーが立派な門を見上げていた。


「凄い豪邸だな。表札も無いけど、ここが本当にピンクの家なのか?」


 イエローが自信満々の表情をしているブルーに訊ねる。


「なんだよ、俺の第六感が信じられないって言うの?」

「いや、そういう訳じゃないんだけどな」

「それは仕方ないでしょ。だって、本部からあんたの第六感だけを頼りにここまで来ちゃったんだから」


 ブラックがイエローを擁護する。メンバー達はブルーの第六感に従ってここまで辿り着いていたのだ。


「本部長にピンクの住所を聞いた方が良かったな。事情が事情だけに教えてくれただろう」


 レッドが門の周りを見回してそう言った。


「俺達が自力で辿り着くことに意味があるんだろ。ちゃんと着いたんだから文句言うなよ」

「ちゃんと着いたのかな……」


 イエローがまだ信用出来ずに呟く。


「もう良い、俺はピンクを呼ぶぞ」


 ブルーは一人で門の前に進み出た。


「ピーンークーちゃん、あーそーびーまーしょ!」


 ブルーは大声で叫ぶ。


「ちょ、ブルー、そんな呼び方して、もし違う人の家だったらどうするんだ」


 レッドが慌ててブルーを止める。


「俺は俺の第六感を信じる。みんなも一緒に呼ぼうぜ」


 ブルーはレッドの制止を気にも留めない。


「私も呼ぶよ。ブルーを信じる。そもそも仲間を信じられなかったことで、ピンクを傷付けてしまったんだから」


 ブラックはそう言ってブルーの横に並ぶ。


「ピーンークーちゃん、あーそーびーまーしょ!」


 二人は声を揃えてピンクを呼んだ。レッドとイエローはお互いの顔を見て頷き、ブルーとブラックの横に並ぶ。


「ピーンークーちゃん、あーそーびーまーしょ!」


 四人は声を揃えて、大声で叫んだ。閑静な高級住宅街に似合わぬ、四人の叫び声が何回も響き渡る。


「ピーン―ク……」


 しばらくして、門がゆっくりと開き、おずおずとピンクが顔を出した。スッピンのまま、ラフな服装で出て来た彼女は、戸惑った表情を浮かべている。


「ピンク!」


 ブラックは飛びつくようにピンクに抱きつく。


「ブラック……」

「ごめんね。ピンクを信じなくて怖いだなんて思って……本当にごめん」


 ブラックはピンクに抱きついたまま泣きじゃくる。


「ピンク、本当にすまなかった。メンバーを信じないなんて、リーダー失格だ」

「ピンク、俺もすまなかった。こんな図体して怖いと思うなんて、情けないよ」

「みんな……」


 レッドとイエローもブラックに続いて謝る。


「そうそう、みんなちゃんと謝って、ピンクに許して貰いなさいよ……ひえっ……」


 調子に乗ったブルーはレッド達三人に睨まれてビビる。


「みんな聞いてくれ。俺の名前は赤松ハヤテ(あかまつはやて)。住所は後でラインで送る。みんなに知ってて貰いたいんだ」


 レッドが個人情報をみんなに告げる。みんなもレッドの気持ちに同調した。


「俺の名は黄昏剛士(たそがれつよし)。俺も住所を送る。これからもよろしくな」

「私は黒野若葉(くろのわかば)。よろしくね。住所はブルー以外には送るわ」

「何でだよ!」


 ブラックの理不尽さに、ブルーは文句を言う。


「俺は青井大地(あおいだいち)。俺も住所を送るからみんな遊びに来てくれよな!」

「部屋はちゃんと片付いてるの?」

「大丈夫だって!」


 ブラックのツッコミに、ブルーは子供のように怒る。


 残る一人となったピンクは、メンバーたちの顔を見回す。


「本当に私がサイコレンジャーに残って良いの?」


 みんなは笑顔で頷く。


「私の名前は桃山真心(ももやまこころ)。住所は……そう言えば、ここが良く分かったね」

「俺の第六感に従ってここに来たのさ」


 ブルーが胸を張る。


「そうなの! ありがとう、ブルー。ありがとう、みんな」


 ピンクは自分を受け入れてくれた仲間に心から感謝した。


「お嬢様、お茶の準備が出来ました。みなさんもどうぞ」

「ありがとう、芳江さん」


 玄関から芳江が声を掛けた。


「みんな、中へどうぞ。もっとみんなの話を聞かせて欲しいわ」


 ピンクの呼び掛けに、他のメンバーも快く応じた。サイコレンジャーの結束がさらに高まった一日だった。

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