第三十話 ハカマ・ウォーリアー! 2
【ハカマ・ウォーリアーに標的にされた】
ヒイロお姉ちゃんに攻撃を受け止められ、炎に姿を照らされたのは——
巨大な太刀を持ったウォーリアーだった。
「お姉ちゃん!」
「大丈夫!」
ウォーリアーの攻撃をカツンと弾く。
わ……。
一歩引いて体勢を整えたウォーリアーの姿は、小袖に袴。
和服をまとって、ゆらゆらと炎をうつす太刀を下ろし、構えている。
「ヒイロお姉ちゃんだ……」
「なるほど。これで大体わかったね」
お姉ちゃんも抜刀して、身体が煌々と輝いた。
〈相手と対峙した時、防御力がほんの少し上昇〉
〈相手の攻撃スキルの命中率が少し減少〉
「おそらくこれはウォーリアーのボス的な個体なんだよ。それで前のボスを倒した狩人の真似をするんだ。だから、前回はウォーリアーの依頼に来たスティードの真似をして、それで初心者の狩人じゃ勝てなくなってたんだと思う」
「じゃ、じゃあ、このウォーリアーはマッスル・ウォーリアーを倒したお姉ちゃんの真似をしたボスってこと?」
「たぶん。でも……」
と、ハカマ・ウォーリアーは納刀して、ぐっと、腰を落とした。
あ、これって——
〈ソード・アタック〉
駆け出すと同時に大きな太刀を抜き、お姉ちゃんが使うスキルで斬りかかってきた。
その攻撃をお姉ちゃんが太刀で受け止める。
「お姉ちゃんのスキルだ……」
「ふふん。……でも、あたしの真似ってことは攻撃力は低いんじゃない?」
スキルを受けてもお姉ちゃんは全然ダメージをくらっていない。
「残念だったね! ランくんがいるから、攻撃力と防御力を転換できるんだよ! 私ひとりじゃ、私には勝てない!」
ガキン、と、相手の太刀を弾くと、
「ランくん!」
太刀を納め、腰を落として——
「うん!」
〈ローリング・オーバー〉
お姉ちゃんの低い攻撃力と高い防御力を転換し、高い攻撃力と低い防御力になる。
「いくよっ! 超高火力っ!」
〈ソード・アタック〉
ヒイロお姉ちゃんが飛び出し、今にも相手を斬らんとしたとき——
ハカマ・ウォーリアーの目がギランと光った。
あ——
「あぶない——っ!」
〈ローリング・オーバー〉
攻撃力の上がったお姉ちゃんの刀身がハカマ・ウォーリアーをとらえる直前、もう一度スキルを使って、お姉ちゃんの攻撃力と防御力を反転させた。
お姉ちゃんの攻撃をぎりぎりのタイミングで、相手の太刀が受け止める。
こおおおおおお。
洞窟内に金属音が反響している。
「っ——」
お姉ちゃんの顔が、さっと、青ざめた——
〈リフレクション〉
ハカマ・ウォーリアーがお姉ちゃんの刀を払って、カウンター技を叩き込んだ。
「くっ——」
お姉ちゃんは大きく後ろに飛ばされた——
けど、なんとか太刀を持っていない方の手と両膝をついで倒れるのを堪えた。
「……、はぁっ……、うそ……」
動悸が僕のところまで聞こえてくるのがわかる。
ダメージは大きくはないけど……。
「……、あぶなかった……」
ヒイロお姉ちゃんが喉を鳴らしながら、言った。
僕の
斬りかかる直前に高かった攻撃力を低い状態に戻すことで、〈ソード・アタック〉の威力を大幅に落として、カウンタースキル〈リフレクション〉のダメージが大したものにはならなくなった。
「……ランくん。ありがとう」
「うん。大丈夫? お姉ちゃん」
「やっと、落ち着いてきた……。そっか、私にはこれがあったね」
ふぅと大きく息を吐いて、立ち上がった。
「どうしよう……。ランくん、どうやって倒そう……?」
「お姉ちゃんの弱点を探せば……」
「私の弱点って……?」
ヒイロお姉ちゃんは防御力がものすごく高い代わりに攻撃力がとても低い。
これが弱点かな……。
「お姉ちゃんの防御力でも受け切れないくらいとんでもなく高い攻撃力で攻める?」
「でも、それじゃ反射されたら負けちゃうよ」
今みたいに、攻撃力を高くして一気に勝負を決めようとしても〈リフレクション〉で二倍反射されてしまえば、その瞬間に僕たちの負けになる。
だけど、低い攻撃力のままじゃ、相手の高い防御力を貫くことはできない。
「じゃあ、〈リフレクション〉で対応できない長距離での攻撃とか……?」
「私たちには長距離スキルないよね……」
「だったら……」
……、
……、
あれ……?
「ね、もしかしてさ……」
「私も、そんな気がしてきた……」
「ヒイロお姉ちゃんじゃ、お姉ちゃんには勝てない……?」
——————————
ラン US〈相手の攻撃スキルの命中率が少し減少〉
SS〈ローリング・オーバー〉……味方の攻撃力と防御力を反転させる。もう一度使用すると元に戻る。
AS〈ソード・アタック〉……低威力技。
ヒイロ 『陽暮』
US〈相手と対峙した時、防御力がほんの少し上昇〉
TS〈リフレクション〉……ジャストタイミングで使用することで、近接攻撃を無効にし、二倍の威力にして相手に返す。
AS〈ソード・アタック〉……低威力技。
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