第二十九話 ハカマ・ウォーリアー! 1

 数日後——

「大変です。ヒイロさん! 今日ウォーリアーの討伐に向かった狩人の方が、またまた依頼を失敗して帰ってきてしまいました」

「え……?」


 と、いうことで前回の報酬はたっぷりともらった後に、もう一度くだんの洞窟に赴くことになった。

 前と同じ場所に馬車を停めて、僕とヒイロお姉ちゃんのふたりで洞窟まで歩いている。

「うーん。どういうことなんだろう? あのむきむきウォーリアーは倒したのに」

「ちょっとヤな予感がするね……」

 両腕を広げて、ぐあーっと、威嚇してくるウォーリアーを一体、さくっと倒して洞窟に入っていく。


 松明のあたりまで来ても特に前回と変わったところはない。

 お姉ちゃんがいうには、今まではこの松明の近くにも見張りのウォーリアーがいたみたいだけれど。

 と——

「——っ!」

 突然、ぞっ、と、背中をうじうじした蟲が這うような悪寒に襲われた。

「……?」

「……」

 隣を見ると、お姉ちゃんの目の色が変わっている。

「……、お姉ちゃんも……?」

「うん。何か、やばいかも……」

 洞窟の中は特におかしな点はないように思える。

 でも、今の一瞬、僕でも、すごいに目をつけられたようなことだけはわかった……。

 前回のこの場所は、嵐の前の静けさといったような雰囲気だった。

 でも今回は、嵐は来ない。

 そんな気がする……。

 嵐じゃなくて、もっと鋭く冷たいもの。

 すっと伸びた松明の炎からは、音もしない。

 風もないのに、ゆらっと、形を変えている。

「……」

 ぽちょん、と、岩から滲み出た水が一滴、落ちた。

「……、ランくん。くる」

「……うん」

 この前みたいにドシンドシンと足音は聞こえないけれど、何か異様な気配が奥から近づいてくるのがわかる……!

 ふっ、と、松明が揺れる——

「きたっ——!」


 ガツン——っ!

 その瞬間、お姉ちゃんが闇から飛び出してきた攻撃を、太刀でガードした。



——————————


ラン   US〈相手の攻撃スキルの命中率が少し減少〉

     SS〈ローリング・オーバー〉……味方の攻撃力と防御力を反転させる。もう一度使用すると元に戻る。

     AS〈ソード・アタック〉……低威力技。



ヒイロ  『陽暮』

     US〈相手と対峙した時、防御力がほんの少し上昇〉

     TS〈リフレクション〉……ジャストタイミングで使用することで、近接攻撃を無効にし、二倍の威力にして相手に返す。

     AS〈ソード・アタック〉……低威力技。

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