第二十六話 ウォーリアー! 2

 ごとん、ごとん、と馬車が走り、僕とヒイロお姉ちゃんはそれに揺られている。

 今回は、ギルドから直接お姉ちゃんに依頼をされたもの。

 標的ターゲットは低ランクの魔物、ウォーリアーの調査——


「ウォーリアーの調査ですか?」

 ヒイロお姉ちゃんが受付のお姉さんから依頼書を受け取ると、首を傾げた。

「はい。ぜひ、強いと評判のヒイロさんにお願いしたいのですが」

「うーん……」

 お姉ちゃんは手で顎をいじりながら、依頼文を読んでいる。

「ね、ウォーリアーって何?」

「うーんとね、低ランクの魔物だよ。小さくて攻撃的なんだけど、フツーの狩人なら簡単に倒せるかな。草食の温厚な生き物を群で狙うような魔物で、食物連鎖のためには、他の生き物の数が増えすぎないために必要ではあるんだけど……。——ウォーリアーの討伐に行った狩人が何人も負けて帰ってきてるんですか?」

 お姉ちゃんは僕に応えたあと、受付のお姉さんに訊いた。

「そうなんです。実は少し前に『マッスル・ウィズダム』こそスティードさんがウォーリアーの個体数管理のために討伐に行ったのですが……。それ以降、他の狩人のみなさんが、簡単なはずのウォーリアー討伐依頼を失敗していまして。そんな状態が数日続いているんです」

 スティードさんがウォーリアー討伐依頼を達成したのち、それ以降の狩人が負けて帰ってきているという。

「たしかに不思議だけど……。よし、まあ、とりあえず行ってみようか。ランくん、今日はこの依頼でいい?」

「うん。大丈夫だよ」

「わかりました。受付しますね。今回は調査ですが、討伐した数はカウントしておいて後で報告をお願いします——」


 ——そういうことで、今日は僕とお姉ちゃんでウォーリアーの調査に向かっている。

 お姉ちゃんは何度かウォーリアー依頼をひとりで受けたことがあるみたいで巣の洞窟を知ってるみたい。

「ね、お姉ちゃん」

「なに? ランくん」

 僕の隣で景色を見ていたお姉ちゃんが顎に手を置いたまま、顔をこちらに向ける。

「はじめて会ったときに、対人よりも対魔物の方が得意だって言ってたよね。何か理由があるの?」

 どっちかといえば、対魔物の方が多いかなー——

 今は悪い人たちを相手に戦ってるイメージの方が強いけど、僕と会う前は魔物を討伐していたことの方が多いって言ってたはず。

「あー、そっか。今はランくんがいるけど、私ひとりのときって、スキルが〈リフレクション〉しかなかったんだよね。対人は相手の動きが読みづらいけど、魔物の動きって単調だから」

「……、カウンタースキルだけでよく倒せてきたね……」

 と、そんな話をしていると、

「あ、見えてきたよ! あの洞窟。ウォーリアーが巣にしてるんだ。——騎手さん、ありがとう。ここで大丈夫です!」

 お姉ちゃんが馬車を停め、太刀を手に取った。

「よし、ランくん、今日もお仕事がんばろう!」



——————————


ラン   US〈相手の攻撃スキルの命中率が少し減少〉

     SS〈ローリング・オーバー〉……味方の攻撃力と防御力を反転させる。もう一度使用すると元に戻る。

     AS〈ソード・アタック〉……低威力技。



ヒイロ  『陽暮』

     US〈相手と対峙した時、防御力がほんの少し上昇〉

     TS〈リフレクション〉……ジャストタイミングで使用することで、近接攻撃を無効にし、二倍の威力にして相手に返す。

     AS〈ソード・アタック〉……低威力技。

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