第十七話 マッスルウィズダム降臨4

「痛てて……」

「よし、これで大丈夫かな」

 ギルドの一階席の円テーブルにて。

 ヒイロお姉ちゃんが傷の手当てをしてくれる。

「ごめんね、ランくん。痛い思いさせちゃって」

 なでなで。

 髪を優しく撫でながら、お姉ちゃんが顔を覗いている。

「何とも思ってないよ。それよりヒイロお姉ちゃんの方がいっぱい……」

「私は防御力が高いから大丈夫だよ」

 と、お姉ちゃんが机に置かれていた湯呑みに手を伸ばしたとき——


「よう」

 突然誰かの手が僕の頭の上に載った。

 お姉ちゃんとは対照的に、ぐしゃぐしゃと乱雑に撫でられる。

「げ」

 僕は見えないけれど、お姉ちゃんの反応から誰が来たかわかった。

 その人は同じテーブルの椅子に座って、足を組んでテーブルに掛けた。

「お前、負けたんだってな。『マッスルウィズダム』に」

「ちょっと、机の上に足なんて載せないでよ」

 ルヴィンさんが、今までにないくらい機嫌のよさそうな顔をして座っていた。

「何か飲まれますか?」

 それに気づいたギルドの職員さんがテーブルまで寄って、ルヴィンさんに訊く。

「ああ、コーヒーひとつ、頼めるか?」

「かしこまりました」

 と礼をして、職員さんが去っていく。

「はは。うわさになってるぞ。『陽暮』が『マッスルウィズダム』に負けたって」

 ルヴィンさんは、足を下ろして頬杖をついた。

「うるさい。気にしてないし」

 お待たせしました、と、コーヒーがルヴィンさんの前に置かれる。

 それを口に運んで、舌を湿らせ、

「悔しくないのかよ」

 と言った。

「別にあの人、悪い人じゃないからもう一回戦う理由もないし」

「じゃあ、二つ名では『陽暮』が一番弱いってことだな」

 さすがにカチンときたのか、むっと眉根を寄せている。

「あなたなんて私に負けたじゃない」

「今やったら負けねぇよ」

 ルヴィンさんは腰に掛けているリボルバーを取り出して、布で拭き始めた。

「ねぇ、あなた何しにきたの。今ランくんと楽しく過ごしてたんだけど」

「からかいに来たんだよ。こんな面白い話ねぇだろ。ほら、あっちで話題になってるぞ」

 銃を置いて、コーヒーを啜りながら、別のテーブルを示す。

 そこでは四人の男性狩人が談笑していた。


——『陽暮』が『マッスルウィズダム』に負けたらしいぞ。

——やっぱ強いんだな。

——おい、あのテーブル、『陽暮』のパーティーじゃないか。

——あそこ『クリティカルガンマン』もいるぞ。

——『クリティカルガンマン』って、『陽暮』のパーティーだったよな。

——へー、じゃあ、『陽暮』も『クリティカルガンマン』も『マッスルウィズダム』にやられたのか。


 ルヴィンさんがコーヒーを吹き出した。

「わ! 汚い!」


——『陽暮』も『クリティカルガンマン』も勝てないなら、この町最強の狩人は『マッスルウィズダム』で決まりだな。


——————————


ラン   US〈相手の攻撃スキルの命中率が少し減少〉

     SS〈ローリング・オーバー〉……味方の攻撃力と防御力を反転させる。もう一度使用すると元に戻る。

     AS〈ソード・アタック〉……低威力技。



ヒイロ  『陽暮』

     US〈相手と対峙した時、防御力がほんの少し上昇〉

     TS〈リフレクション〉……ジャストタイミングで使用することで、近接攻撃を無効にし、二倍の威力にして相手に返す。

     AS〈ソード・アタック〉……低威力技。



ルヴィン 『クリティカルガンマン』

     US〈クリティカルの発生率・クリティカル時の威力が上昇〉

     AS〈クイック・ショット〉……三連射。クリティカルしやすい。

     AS〈ライナー〉……必中。クリティカルしやすい。

     AS〈インストゥル・バースト〉……近距離で発動するほど威力上昇。



スティード 『マッスル・ウィズダム』

     US〈相手に与える近接攻撃の威力が二倍。相手から受ける近接攻撃を半減〉

     AS〈マッスル・ストレート〉……通常攻撃。

     AS〈マッスル・ヒットパレード〉……連続攻撃。

     AS〈?〉……?

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