第十八話 マッスルウィズダム降臨5

【ルヴィンがスティードを標的とした】


「てめぇ、俺の名前を汚しやがって」

「ふはははは。『クリティカルガンマン』と『マッスルウィズダム』。どちらが強いか決めようではないか」

 ルヴィンさんが銃を抜き、マッスルウィズダムが構えた。

 互いの身体が煌めいて、USが発動する。

〈クリティカルの発生率・クリティカル時の威力が上昇〉

〈相手に与える近接攻撃の威力が二倍。相手から受ける近接攻撃を半減〉


「どっちが勝つのかな」

「ルヴィンがぼこぼこにされるといいなー」

 今回、僕とヒイロお姉ちゃんは離れたところで観戦している。


 ルヴィンさんがマッスルウィズダムに銃口を向けた。

「いいのかよ。お前のUSじゃ銃には敵わないんじゃないか?」

「ふん。どこかの貴族といっしょにするな」

 ぐっ、と上半身を強調している。

「へ。じゃあ、いくぜ」

〈クイック・ショット〉

 ドドドン。

 三発の弾丸が命中した。

【Critical】【Critical】【Critical】

 全弾クリティカルヒット。

「ぬう。なかなか……」

 さすがのマッスルウィズダムも体勢を崩した。

「そんなもんか。攻撃しねぇのなら、もう一発いくぜ」

「ふ。次は、俺の番だ」

 と、マッスルウィズダムは左肩でタックルするようにして、ルヴィンさんに向かって駆け出した。

「近づけねぇよ」

〈クイック・ショット〉

 もう一度、三発の弾丸が、マッスルウィズダムに襲い掛かる。

〈サクリファイス〉

【Critical】【Critical】【Critical】

「……」

 しかし、弾丸を受けてなお、マッスルウィズダムは止まることなく、そのまま突っ込んでいく。

 〈サクリファイス〉は、短時間、受けるダメージが増加する代わりによろめかなくなるASアタッカースキルだったはず……。

 使い所を間違えれば被ダメージが増えて負けてしまうが、その時間は攻撃をし続けることができる。

 つまり、この一瞬で勝負を決めにきた。


「終わりだ。『クリティカルガンマン』」

「はっ、距離を詰れば勝てると思ったか?」

 不敵な笑みを浮かべたマッスルウィズダムに対し、ルヴィンさんも余裕を見せる。

 そう、普通の銃使いは近距離が苦手だけど、ルヴィンさんにはあのスキルがある。

 くるくると銃を回転させて構え、ぎりぎりまで相手を引きつける。

「終わるのはお前だ。近距離」

〈インストゥル・バースト〉

【Critical】

 距離が近いほど威力の上がる銃のAS。

 これを近距離で受けたマッスルウィズダムは——


 ——倒れなかった。

「ふはははは」

 その場に仁王立ちして、高笑いしている。

「なっ——」

 カウンター技を防がれたときのお姉ちゃんと同様に、ルヴィンさんは呆然とマッスルウィズダムがピンピンしている様子を眺めている。

「俺の最大火力が……」

「ふふ。たしかに俺のUSは弾丸の威力を半減できない。だが、お前の今のスキルの効果を考えてみろ」

 近距離で発動するほど威力が上昇するスキル……。

 そして、マッスルウィズダムのUSは——

 近接攻撃を半減。

 近接武器ではなく、近接攻撃を半減する。

 ということは……。

「俺の〈インストゥル・バースト〉が半減された……?」

「ふ、この距離で俺には敵うまい。もらったぞ、『クリティカルガンマン』」

 ぐーっ、と、腰を下げて、右腕を構える。


「おいヒイロ。ラン」

 ルヴィンさんが僕たちの方を見た。

 ふたりそろって首を傾げる。

「痛かった……?」

 こくん、と、そろって頷く。


〈マッスル・ストレート〉

「——————」


【ルヴィンがスティードに敗北した】


——————————


ルヴィン 『クリティカルガンマン』

     US〈クリティカルの発生率・クリティカル時の威力が上昇〉

     AS〈クイック・ショット〉……三連射。クリティカルしやすい。

     AS〈ライナー〉……必中。クリティカルしやすい。

     AS〈インストゥル・バースト〉……近距離で発動するほど威力上昇。


スティード 『マッスル・ウィズダム』

     US〈相手に与える近接攻撃の威力が二倍。相手から受ける近接攻撃を半減〉

     AS〈マッスル・ストレート〉……通常攻撃。

     AS〈マッスル・ヒットパレード〉……連続攻撃。

     AS〈サクリファイス〉……短時間、被ダメージが増加するが怯まない。

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