第十五話 マッスルウィズダム降臨2

「ふはははは」

 筋肉むきむきの男性がポージングをキメたまま、笑い声を上げている。

 商店通りのど真ん中で。

 個人経営の宿屋の真ん前で。

 上裸の男性が。

 町を歩く人たちはみんな訝しみながら男性を眺めている。

 ……。

「あの、何か用事ですか?」

 ヒイロお姉ちゃんがある程度の距離を保ったまま、男性に訊いた。

 不審というよりは呆れている様子。

「俺が先に聞いたんだ。先に応えてもらおう。貴様が『陽暮』だな?」

「違います」

 即答。

「ランくん。行こう」

「うん」

「待て待て待て待て」

「……」

 お姉ちゃんが首だけを向ける。

 むすっとした表情で。

 めんどくさ、と顔に書いてある。

「和服に太刀、そして取り巻きの弟。貴様以外に考えられんわ」

 取り巻きって言われたんだけど。

「……」

「貴様、先日シュトロフォーネを倒したそうじゃないか」

「……それがどうかしましたか」

 男性は一言発するたびにポージングを変えている。

 アドミナブルアンドサイ、ラットスプレッド。

「許せん!」

 モストマスキュラー。

 なんか最初に戦った気がする。

 こんな感じの木と。

「あやつは俺の標的ターゲットだったのに。くそう。『陽暮』の名は町中に響き渡ってしまった」

 ビシッと、お姉ちゃんを指差した。

「そこで、この町『クリミナ・セレス』でも五本指の狩人といわれる『陽暮』と『マッスルウィズダム』、どちらが強いかはっきりさせようではないか」

 えぇ……。

 勝っても負けても利益ないよ……。

 って、この人が『マッスルウィズダム』か。

 相当強くて有能な狩人って、うわさだけど。

 有能な、は誤報かな。

「いいよ」

「え」

 意外にも、お姉ちゃんが快諾してしまった。

 ヒイロお姉ちゃんは、名声みたいものに興味はなかったはず。

 ピシッと、今度はお姉ちゃんが男性にすらりと伸びた人差し指を向ける。

「ランくんにケガさせたこと許さないから!」

 そんな理由……?

「ふはははは! この町で最強の狩人は俺だ。それを証明してやろう」

 気持ちのよい天気の下、『マッスルウィズダム』の快活な声が響いた。


——————————


ラン   US〈相手の攻撃スキルの命中率が少し減少〉

     SS〈ローリング・オーバー〉……味方の攻撃力と防御力を反転させる。もう一度使用すると元に戻る。

     AS〈ソード・アタック〉……低威力技。



ヒイロ  『陽暮』

     US〈相手と対峙した時、防御力がほんの少し上昇〉

     TS〈リフレクション〉……ジャストタイミングで使用することで、近接攻撃を無効にし、二倍の威力にして相手に返す。

     AS〈ソード・アタック〉……低威力技。

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