第十三話 横暴貴族をやっつけろ! 3

「貴様……!」

 シュトロフォーネが片膝をついたまま、ルヴィンさんを睨んだ。

 弾丸が命中した場所を押さえている。

「お前たちのパーティー以外が手を出すなど……。民衆の前で誓ったはず……」

「残念だったな。俺もこのあほどものパーティーのひとりなんだよ」

 そう言って、狩人免許ハンターライセンスを見せる。

「……なっ! そんな、聞いていないぞ。先日の少女も『陽暮ひぐらし』と少年、このふたりに助けられたと言った……」

「知るか。おい、ラン」

「なに?」

 ルヴィンさんが火の点いていないタバコを咥える。

「あいつ。シュトロフォーネ、だっけか。剣を武器とする狩人ハンターだけに声を掛けて、誓約書を書かせてるらしい」

「それって……」

「絶対に勝てる相手にだけ、ってことだ。だから、こうしてダメージを受けるのも久々なんじゃねぇのか」

「ずるいよ」

 ふーっと、息を吐く。

 煙もないのに。

「それに、この町『クリミナ・セレス』の狩人は剣を使うやつが大半だからな。報酬の二割……。かなり儲かってんだろ」

 酷い。

 そんなことして、利益を得てるなんて。

「で、そんなこともすりゃあ、依頼も出るだろうな。実際、賞金が掛かったこともある。だが、それを持ち前の権力で取り消し、依頼主を罰した。で、今だ。これだけ見てるやつもいる。今こいつを捕らえれば、報酬も出るぞ」

 って、ことは……。

「……ねぇ、ルヴィンさん。ルヴィンさんが来たのって——」

「報酬目当て」

 僕らを助けに来てくれたわけじゃなかったんだ……。

 ルヴィンさんは僕に寄り掛かって横になっているヒイロお姉ちゃんに目を向ける。

「やられてやんの」

「うるさい。あなたが来なくても私があの変態貴族を倒してたのに」

「そのナリで何言ってんだよ。黙って見てろ」

 ルヴィンさんはヒイロ姉ちゃん向かって、ぽい、と、咥えていたタバコを投げた。

 もちろん、火は点けてないやつだけど。

「わ! 汚い! さいあく!」

 お姉ちゃんは反射的にそれを払い除け、僕の服に顔を埋めてごしごしと擦った。


「さあ、シュトロフォーネ。お前に掛かってる賞金をもらおうか」

「くそ……。絶対に許さん!」

 シュトロフォーネはルヴィンさんに向かって駆け出し、

「とあっ!」

〈ライトロード〉

 先ほどの大技は連続で使用できないのか、威力の低いスキルを使ってきた。

 シュトロフォーネのスキルがルヴィンさんに直撃しようかというとき——

 ——今だ!

〈ローリング・オーバー〉

 味方の攻撃力と防御力を反転させるスキルをルヴィンさんを対象にして使用する。

 アタッカーの場合は、高い攻撃力が防御力になる。

 ルヴィンさんは銃を盾にし、細剣のスキルを受けた。

「おい、ラン。余計なことすんな。元に戻せ」

「え? でも」

「早く」

「あ、うん」

〈ローリング・オーバー〉

 再度使用すると元に戻る。

 ルヴィンさんは、きっさきを払い、くるくると銃を回転させて、シュトロフォーネの腹部に銃口を当てる。

 そして、左手で胸元を掴んだ。

「ゼロ距離」

「なっ……」

〈インストゥル・バースト〉

「——————」


【Critical】

 ルヴィンさんの身体が輝く。

 距離が近いほど威力の上がる銃のASアタッカースキル

「がぶっ————」

 それがゼロ距離で直撃したシュトロフォーネは耐えられるはずもなかった。

 が、ルヴィンさんが胸元を掴んでいたため、その場に留まる。

「お前を倒すのは俺じゃ意味ねぇんだ」

 そのまま襟を掴み直し、シュトロフォーネの正面を僕たちの方へ向ける。

 そして、今まで寝転んでいたヒイロお姉ちゃんが立ち上がり、シュトロフォーネの下へ走っていく。

「いくよ! 渾身の——」

 走りながら、左手をぶんぶん振り回している。

「左ストレート!!」

 お姉ちゃんの拳がシュトロフォーネの顔面に炸裂した——


【シュトロフォーネに勝利した】


「依頼達成」

 倒れたシュトロフォーネを見て、ルヴィンさんが新しいタバコを口に咥えようとした、けど……、

「あなたには右!!」

 ヒイロお姉ちゃんが右ストレートをお見舞いした。

「痛ってぇな! 何すんだよ」

「一度咥えた物を女の子に投げるとか考えられないよ! ゴミだよ、ゴミ! このゴミィン!」

「お前の異名、『その日暮らし』だってな」

「……! えーん、ランくん慰めて!」


——————————


ラン   US〈相手の攻撃スキルの命中率が少し減少〉

     SS〈ローリング・オーバー〉……味方の攻撃力と防御力を反転させる。もう一度使用すると元に戻る。

     AS〈ソード・アタック〉……低威力技。



ヒイロ  US〈相手と対峙した時、防御力がほんの少し上昇〉

     TS〈リフレクション〉……ジャストタイミングで使用することで、近接攻撃を無効にし、二倍の威力にして相手に返す。

     AS〈ソード・アタック〉……低威力技。



ルヴィン US〈クリティカルの発生率・クリティカル時の威力が上昇〉

     AS〈クイック・ショット〉……三連射。クリティカルしやすい。

     AS〈ライナー〉……必中。クリティカルしやすい。

     AS〈インストゥル・バースト〉……近距離で発動するほど威力上昇。

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