第十話 初めての敵US3

「大丈夫だった? ケガはない?」

「はい……。あの……」

「ん?」

「ほ、本当にありがとうございます」

 ボイドーに連れ去られそうになっていた少女が、お姉ちゃんと僕に頭を下げた。


「えへへ、どうしたしまして。でも、あんまり気にしないで。私たちこれが仕事だし」

 ちらっと、狩人免許ハンターライセンスを見せる。

「か、かっこいい……」

 少女は目を輝かせながら、ヒイロお姉ちゃんに見入っていた。

 お姉ちゃんのピンチを救ったっていう袴姿の太刀使いも、当時のお姉ちゃんからはこんな風に見えてたのかな。



 路地裏から出て、オレンジに染まる住宅街を歩いていく。

「あの……」

 女の子が口を開いた。

「どうしたの?」

「失礼かもしれないけど……、おふたりのお名前を聞いてもいいですか?」

「いいけど、どうして?」

 お姉ちゃんは少し屈んで、なるべく女の子に目線を合わせて話をしている。

「お父さんとお母さんにお話したいから……。また後日ちゃんとお礼できるかもしれないし……」

「そんなこと言われちゃったら言いにくいよ」

 あはは、と後頭部を掻く。

「でも……」

「うん。私、ヒイロ。この子は弟のランくん」

「弟じゃないよ……」

「いいの。弟みたいなものだし」

 なでなで。

「やめてよ。お姉ちゃん……、女の子も見てるんだよ」

「ヒイロさんとラン君……」

 君……?

 と、女の子の足が止まり、数歩前にある左手の建物を指した。

「あ、家ここです」

「よし、じゃあ、任務達成。これからも気をつけたね」

「あ、待って!」

 手を振ったお姉ちゃんを、少女が引き止めた。

「?」

「あの、中にお父さんとお母さんがいるので、お礼を……」

「うんん。気持ちは嬉しいけど、大丈夫だよ」

 そう言って、お姉ちゃんは少女が家に入るのを見届けようとする。

「あ、あの、私の名前、リイアって言います。その……」

「うん、リイアちゃんね。私たち、いつもそこのギルドにいるから、何かあったら遠慮なく来てね」

 ぽん、と、ヒイロお姉ちゃんがリイアさんの頭に手を載せる。


「本当にありがとうございました」

 別れ際、家の前でもう一度、リイアさんが深く腰を折って、頭を下げた。


 沈みかかった日は、空は緋色に染め、リイアさんの影を大きく伸ばしていた。


——————————


ラン   US〈相手の攻撃スキルの命中率が少し減少〉

     SS〈ローリング・オーバー〉……味方の攻撃力と防御力を反転させる。もう一度使用すると元に戻る。

     AS〈ソード・アタック〉……低威力技。



ヒイロ  US〈相手と対峙した時、防御力がほんの少し上昇〉

     TS〈リフレクション〉……ジャストタイミングで使用することで、近接攻撃を無効にし、二倍の威力にして相手に返す。

     AS〈ソード・アタック〉……低威力技。

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