第6話 初めての口づけ

 真っ白い壁紙で覆われた清潔な部屋に足を踏み入れる。


 部屋の右端には大きなベッドがひとつ。


 左側にはなにやら開けた空間が設けてあり、いかにもそういうことをするための部屋なのだと否応なく意識させた。


「あ、と……風呂、あがったよ……」


 緊張から、わざわざ口に出さなくともいい事まで言ってしまう。


 そんなこと、制服姿のままベッドにちょこんと腰かけている少女から見ればすぐに分かることだ。


 もちろん、彼女の方が先に入ったのだからあがったことをわざわざ知らせる意味も薄い。


 いや……違うか。


 これから始めると、開始を告げる合図という意味ならば……ある。


「ありがとうございます、おじさん」


 我知らず、生唾をごくりと飲み込んでしまう。


 今から彼女を抱くのだ。


 自分の年齢の半分にも満たない、娘と同学年の少女を。


 息が苦しい。


 緊張で胸が張り裂けそうだ。


 それでも、いやというほど私自身もギンギンに反応してしまっており、興奮と罪悪感で頭が変になりそうだった。


「こっち、座ってください」


 ぽんぽんとベッドを叩かれ、隣に来るよう促される。


 緊張を感じさせない態度だったが、諦観の域にあるからだろうか。


 いざという時、女性の方が度胸があるという話は本当だったのかもしれない。


「あ、あ……」


 ぎこちなくうなずいてから隣に座る。


 その瞬間、少女がするりと腕を絡めて来て、口から心臓が飛び出るかと思うほど驚いてしまった。


「ふふっ。そんなにビクビクしてたらおじさんの方が女の子みたいですよ」


「す、すまない。こんな状況、初めてなんだ」


「私もです」


 右手で額に浮き出た冷や汗を拭おうとしたところで少女と繋がっていることに思い至り、逆の手で拭う。


 一度上げた手をどうするか迷ってしまう。


 下ろすべきか、それとも……このまま少女に触れてしまうべきか。


 結局、決心がつかずに下ろしてしまったのだが。


「お互い真面目ですね」


「……」


 真面目ならばこんなことはしないと返しそうになって直前で踏みとどまる。


 少女のことを否定はしたくなかった。


「恥ずかしながら元妻としか関係を持ったことはないんだ。真面目といえば、真面目になるんだろうか」


「やっぱり、思った通りの人です」


 ふわりと、思春期特有の甘い香りが漂ってくる。


 ラブホテルに置かれていたアメニティを使ったのだから同じ香りが私からもするはずなのに、完全に別物だとしか感じられない。


 それこそ最高級の香水か何かのように思えた。


「おじさん」


 少女の体がしなだれかかってきて、大きな胸がその存在を主張してくる。


「なんででしょう。おじさんの隣って、すっごく安心するんです」


「そ、そうかな。ありがとう」


 柔らかい。


 二の腕辺りに押し付けられたふたつの塊は、服の上からだというのに形を変えて吸いついて来る。


 今すぐにでも触れられたら最高だろうと妄想せずにはいられなかった。


「不思議……」


 少女は体を私に預けると、目を閉じて深く息を吸い込む。


「緊張とか、そんなのほとんどないんです。おじさんだからでしょうか。それとも私にこういう素質があったとか?」


「……私だから、だと嬉しいね」


 後者であればきっと彼女のこれからはあまり辛くなくなる。


 良い事なのかは分からないが、マシであることは確かだろう。


「……うん、おじさんだからだと私も思います」


「ありがとう」


 本能的に男の悦ぶことを分かっているのかもしれない。


 少女は目を開けると「ホントですよ」なんて言いながらペロッと小さく赤い舌を出して薄桃色の唇を舐める。


 あまりに蠱惑的な仕草を前にして、理性の糸が千切れそうだ。


 ダメだダメだとは分かっていても、もう我慢できそうにない。


 至上のごちそうを前にして抗うことなど出来はしないのだ。


「……ほら、おじさんも確認してみてください」


 絡まっていた腕が解かれ、代わりに掌たなごころが捕縛される。


 そしてそのまま少女の心臓の位置へと導かれた。


「そんなにドキドキしてませんよね」


「す、すまない。私の鼓動が大きくて分からないよ」


「うふっ」


 自身の鼓動が邪魔だったのもあるが、もはや肉欲に心が支配されかけていた。


「じゃあ、もっと触って確かめてください」


 ぐびりと喉を鳴らす。


 そんなことを言われては、もう我慢がならなかった。


「――んっ」


 左手を少女の背中に回して引き寄せる。


 少女に触れたままの右手を動かすと、薄桃色の唇から小さな吐息が漏れた。


「ごめん、痛かったかな」


「……違います」


 顔が近い。


 少女の呼気が、私の鼻先をくすぐる。


「男のひとって力が強いんですね。グイって引っ張られて、少しびっくりしちゃいました」


 淫熱に潤んだ瞳が誘う様に揺れる。


「ごめん。君の色香にあてられたら理性なんか吹き飛んでしまうんだよ」


 匂い、感触、仕草、言葉。


 味以外の感覚全てで以って責め立てて来る。


「私、そんなに魅力がありますか?」


「君みたいに魅力的な子は、私の人生で初めて会ったよ」


 欲しい。


 この娘この全てが欲しい。


「今の言い方は、すこし軽薄な感じがします。おじさんもそんなこと言えたんですね」


「私も初めて知った」


「――あっ」


 少女が透き通った声で鳴く。


「あ……あ、あ――――っ」


 背中を撫でれば、細く長い息を吐いた。


 私が触れるたびに少女は新たな反応を魅せる。


 まるで、生きている楽器でも奏でている様だ。


「……キスは、大丈夫かい?」


「初めてをあげたいって言いましたよ?」


 先に少女が軽く私の唇をついばむ。


 次は私が。


 その次は彼女が。


「ちゅっ……んむ……はっ……」


 唇と唇を触れ合わせるごとに粘着質で淫靡な音が響く。


 淫蕩な娼婦相手であれば、こんなことは子どもの戯れレベルであろう。


 でも、年端もいかない未通女おぼこ相手というだけで、興奮はいや増していく。


「……はふっ……んっ……はぁっ……おじ、さぁっ……」


 私のことを呼ばれてしまっては、もう理性の限界だった。


 唇を食べてしまうかと思うほどの勢いで口をぶつけ、舌を少女の中へと侵入させる。


「んむ……ひふっ――んっ……あむ……はぁ……っ」


 甘い少女の唾液をすすり、自らの唾液を少女の口へと送り込む。


 舌で舌をまさぐり、絡めてもつれ合わせる。


 マーキングでもするかのように私の体液を少女の口内へとなすりつけた。


「ぷぁ……は……」


 唇を離すと、私と少女の間に透明な露の橋がかかる。


 焦点の合わない蕩けた瞳で少女は淫靡な橋を眺めていたのだが……。


「あ……」


 重力に負けて落ちた橋を前に、少女は残念そうに唇を尖らせた。


「おじ、ふぁん……」


 んべ、なんて言いながら出した舌に、少女は人差し指を這わせる。


 くちゅくちゅと粘度の高い唾液をまとわりつかせたところで、今度はその指を私の唇に押し当てた。


 熱い塊が私の唇をこじ開け、侵入してくる。


 少女は私の舌を何度も撫でつけ、弄びながら、自らも舌先を伸ばしてゆっくりと虚空をかき回す。


 そのまま少女の指と私の舌先。彼女の舌と大気という変則的なフレンチキスを交わした。


「わたし、おじさんとのキス……好き、みたいです」


「…………私も好きだよ」


 少女の指を離してから同意を示すと、少女は嬉しそうに先ほどまで私の口に入っていた指先を自らの口へと持っていき、


「うふっ」


 パクリと咥える。


 私の唾液をちゅっと音を立てて吸い上げ、飲み下した。


「もう一度、いいですか?」


「…………」


 わざわざ聞く必要はないとばかりに、またも私から少女の唇を貪り始めた。




※こちらはカクヨム規制版になるため、一部表現を変更してあります

この後は18歳未満は御断りの描写が行われますので、未公開となります

後ほどどこか別のサイトで公開を考えておりますのでご了承ください

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