4:勇者リンカは魔王四天王を狙う






 首尾よく【迷いの森】の魔剣を手に入れた勇者リンカは、


「次はどーするんスか?」


 という私の問いに簡潔に答えてくれた。


 すなわち、


「魔王四天王を倒しに行く」


 ……えっ?


「あの? 今、なんて? 四天王って聞こえたんスけど?」


「魔王配下の四天王の一角を崩すぞ」


 勇者リンカは言い直した。

 聞き間違いではなかったようだ。


 聞き間違いじゃなかったかー、じゃなくて、


「いやいやいやいや! いくら魔剣ゲットしたからってレベル全ッ然足りてなくないスか!?」


 魔王四天王。ひとりでも万軍に匹敵するといわれる魔族の英傑。勇者リンカはまだ王都を出て、旅をはじめてほんの二カ月ほどだ。《女神の祝福謎のスキル》や魔剣で彼我の戦力差が埋まるものだろうか。


「レベル差は大した問題じゃない」


 私の不安をよそに勇者リンカは自信満々だった。


「えぇー」


 勝算がある……とか?


 いや、仮に勝算が(勇者リンカの中に)あるとしても、だ。


「魔王軍の中でもとりわけ四天王は神出鬼没で、いつどこに現れるか誰にもわからないんですよ?」


「わかるよ」


「へ?」


「俺にはわかる。ひとりだけだが、四天王の出現する場所を把握してる」


「またまたぁ」


 ご冗談を。そう思って私は笑っていた。この時は、まだ。







 ――数日後。


「なんでわかるんスかっ!?」


 私はひきつり笑いを浮かべていた。


「把握してると言ったろう」


 珍しく表情のある――若干ドヤ顔をしている――勇者リンカの眼前には、魔王軍四天王の姿があった。




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