44.決勝戦その3

 山本学園は背の高い9番をメンバーチェンジしてきた。信子にピリリと緊張が走る。


「大丈夫だよ、フォローするから」雄が信子のお尻を叩いた。


 残り35秒を守りきれるかがこの試合の第1関門だ。


 第3中学の思惑通り山本学園は9番にボールを渡した。信子がぴったりついている。突破口を見出そうとしてピボットを踏む9番。左足を軸にして右足で器用にあきを探している。


 それでもぴったりつく信子。シュートには行かせない。雄も後ろから溢れ玉を狙った。隙あらばボールに喰らいつこうと踏ん張った。パスコースを防ぐ奏歩、凛、麻帆。


 9番はピボットを踏み続ける。


 ピー。審判の笛が鋭く鳴った。なんと信子は3秒のバイオレーションを奪う事に成功したのだ。


 3秒バイオレーションとはゴール下の台形の中でプレーヤーが3秒以上ボールキープをしてはならないというルール。


 ミニバスや初心者などではよく取られるが山本学園のような手練たチームでこのバイオレーションが取られる事はまずないと言っていい。


 それだけ第3中学にとってはディフェンスの功績であった。ますます活気づくメンバーたち。第1クォーターは同点のまま、第2クォーターへと繋がれた。

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