43.決勝戦その2。

 だが、第3中学も負けてばかりではない。奏歩の負けず嫌いが発動した。ドリブルでカットインすると見せかけディフェンスを2枚引き付ける。そのまま後方へワンステップ、止まってシュート。これも面白いように決まっていった。


 山本学園が2ポイント入れる度、奏歩が返す。山本学園も第3中学も相手のパターンを読めてはいる。しかし守りきることが出来なかった。シーソーゲームだ。お互い点を取っては取られる、取っては取られるを繰り返していた。


 これは根負けした方が命取りになる、そんなハラハラ感を抱かせるゲームだった。


 雄がセンターポストへと上がってきた。パスが通る。センター同士1対1だ。山本学園のセンターが雄の前に立ちはだかった。雄は一瞬考えてボールを大きく回しディフェンスを上手に避けてシュートまで行った。ダブルクラッチだ。これが、入る。


 しかも山本学園のファール1。バスケットカウントとなり雄はフリースローを落ち着いて決めてきた。これで山本学園との点差は3となる。残り時間は後3分。


 1クォーター終了までにこの3点を埋めておきたい所だった。


 雄のバスケットカウントは、メンバーに活気を与えた。また奏歩がドライブで、カットイン。ディフェンスはシュートに来ると読んでいて5番からのフォローが入った。


 奏歩は2人を引き付けて得意の大回転。男子Bチームとの試合で見せた技を披露した。ステップを踏み下から掬い上げるようなシュート。はたかれた。しかしシュートは入った。


 ここで山本学園の2つめのチームファール。審判の笛が響く。奏歩にはフリースロー1本が与えられた。見事なバスケットカウントだった。


 2本連続のバスケットカウントにチームが湧いた。乗りに乗っている。今第3中学に波が来ている。

 

 フリースローは奏歩の苦手である。入らない入らないと呪いをかけられたみたいに背の低い奏歩は今までフリースローを落として来ていた。凛は入れ入れと今までとは逆の呪いをかけた。奏歩を応援する気持ちを始めて味わっていた。膝を柔らかく、全身のバネを使って。腕だけに頼らずに。ああ、何でも良いから執念で入れてよね。


 背に腹は代えられない。凛からのオーラに気づいてか、奏歩は片手で支えていたボールを両手に持ち直すと一呼吸した。そして綺麗な弧を描いてシュートを放った。


 右手も左手も同じバランスで外へ開いている。いける、入った、これは、きっと。奏歩にも凛にも、もうゴールが決まる前に分かった。入る時の感触がした。


 そして奏歩のフリースローが得点表に反映された時、山本学園がタイムアウトを取ってきた。同点。第1クォーター残り35秒。ファールは山本学園が2。勢い的には第3中学の流れである。この勢いを止めるための山本学園のタイムアウトだ。




 

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