第32話

 どれくらい経っただろう。いつのまにかボートが母船とつながり、母船から救援物資を持ってSt3の人々が降りてきた。みんなを介抱してくれている。そこにククとココがいる。ククが私を見つけると、走って来て私に抱きついた。

「カナン!無事でよかった。」

私は涙目のククを見て、また泣いてしまった。家族に何かあったのかと驚いてククは尋ねる。いいえ、家族は無事よ。ククに後で聞いてもらいたい話があるの。


 ココさんが私たちのところにやってきて、微笑みながらある方向を指さした。近くに居る人たちも、ココの行動を意識していて、その方角に同じように顔を向けた。日に照らされた海面に小さな突起物が見える。

「陸地だ!陸地が見えるぞ!」

みんなは歓声を上げ、抱き合って喜んだ。その後柱は長い期間海水を吸い上げ続けた後、ある日を境にすっと姿を消した。監視の当番をしていた者が居眠りをしていたため、どう消えたかはわからない。そもそもどう始まったのか、なぜ始まったのかもわからないままだ。

 

 それから私たちは、かつては小さな突起物だった大陸に船をつけた。驚きに満ちた私たちは地に降り立ち、土をつかみ、声もなく涙を流した。


                 終わり

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カナン @uchinookann

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