第5話 幼少期4呪われた子

痛い。背中が痛い。

痛くて息が吸えない。

もう嫌だ...何故こんな目に合うの...


無事に新居への引越しも完了した。

と、言いたいところだが

どうしても腑に落ちない事がある。


引越し作業中に私は何を思ったのか、

家の中の階段をクッションに座って滑り降りてみようと試みた。

上から2段目で早速転げ落ちた。そりゃそうだ。

荷解きをしている母の元へ泣きついた。

「自分が悪いんでしょ!!」

目も合わせてくれない。

今度は父の所に行ってみた。

「えー!タンコブになってるよ!可哀想に!」

と、頭を優しく撫でてくれる。


引っ越す前の家はアパートの2階で

外階段の上から兄が転げ落ちた時の

母の慌てようを覚えている。

だから私は母に怒られた時は嫌味を込めて

「パパ早く帰ってきてよ~」とメソメソウジウジ泣くのだ。嘘泣きで。


母は私より兄が可愛いんだ。

幼心にも薄々と感じていた。


新しい幼稚園は、大きな赤い屋根と制服が

セーラーで可愛いからという理由で選ばれた。

私はこの幼稚園が大嫌いだ。

毎日毎日毎日男の子達に追いかけ回されて

スカートをめくられたり、おしりをタッチされたり、逃げても逃げても追いかけて来る。


その日は船の形をした木のアスレチックに逃げ込んだところ、梯子から足を踏み外して

地面に背中を打ち付け落ちたのだ。


さすがの私も嘘泣きでは済まない。

大慌てで先生がやって来た。

「どうしたの!?」

私は何も答えない。

「落っこちちゃったの!?」

何も答えない。

男の子に追いかけ回されてスカートをめくられていますなんて言えなかった。

その挙句に怪我をした事が屈辱だった。


年長クラスになっても飽きずに意地悪をしてきた【キツネとタヌキとその子分】は今頃どんな大人になっているのだろう。


私は年長クラスになっても時々お漏らしをしていた。(おねしょもしていたが)

その為いつも着替えを持たされていて

お漏らしをした時は誰にも見られないように

こっそりトイレで着替えてバッグに隠した。


「この子は美人になるぞ~」

そんな言葉が頭の中を過ぎった。


呪いがついに発動し始めた。

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