第4話 幼少期3

私は左右に尻をふる。

腰に手をやり、ふりふりふり。

なんならお前らに向けてふりふりふりだ。

どうだこのやろうバリの顔で踊っている。

心が死んでいるのだろう。


兄は対称的だ。

忍者の格好をしてドヤ顔で側転を決めている。

私は思った。心の底から思った。

「こいつ頭狂ってる」


しかし大人からすると死んだ顔で踊る私の方が

「おかしい」らしいから「おかしい」。

人生最大の汚点を録画されたビデオテープが

この世から消えていることを願う。


無事に?年少クラスを終え、年中クラスに上がるタイミングで引っ越すことになった。


私が2歳の時に母方の祖父は亡くなっており、

1人になった祖母と同居するためだ。

年少クラスの間、二世帯住宅にするために

家を建て直していたらしい。


亡くなった母方の祖父、

通称きみしろーは変人だった。

初孫が産まれた時に発した言葉は

「男の子は思春期とか反抗期になったら殴られるから可愛くない!!!」

で、ある。

これが大真面目に言っているから恐ろしい。

孫は目に入れても痛くないと言うが、

孫は目に拳を入れてくる、くらいの表現のほうがしっくりくる。

実際、兄が特段可愛がられることはなかった。


逆に私が産まれた時に発した言葉は

「この子は美人になるぞ~すごいぞ~」

で、ある。

蓼食う虫も好き好き、で間違いないだろう。


母は武勇伝のように語る。

「きみしろーの目はあるようで無い」


しかし、美人であるかは別として

きみしろーの発した言葉を私は呪いだと

思うようになるのであった。

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