第3話 幼少期2

お砂場事件から少し時が経ち、

ついにこの日がきてしまった。

お遊戯会という名のこの世の終わりが...


母が白いタイツを探していた理由がわかった。

私のクラスは【天使のダンス】を踊るため

頭に金色の輪っか、ほぼワカメちゃんの白いフリフリのスカート、白いタイツの衣装を着る。


誰か私を殺してくれ。


そしてよりにもよってセンターである。


誰か...わ、わた...し、を...こ...


息も絶え絶えの中でさらに最悪なことに

目が合う私に向かって両手をブンブン振る

両親と父方の祖父母に母方の祖母がいた。


詰んだ。

やるしかねー。人生最大の汚点をここに刻んでやろうじゃないか。私は覚悟を決めた。


そう。私は幼稚園でも家でもただの1度も

踊りの練習を行っていない。ただの1度も。

しかし、行っていないだけであって

見て覚えてはいるのだ。我ながら抜け目ない。

そして私は無愛想センターキャラとして

完璧に踊ってみせたのである。


舞台袖に戻ると、先生が泣いていた。

それを見て裸の方がマシだと思った。

頼むから0.1秒でも早く着替えさせてくれ。


母は武勇伝のように語る。

「あんたが踊ると思わなかった...泣いた...」

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