甘々2割増し

 今日は甘えたかいがあって手がつなげた。

 いつでもこの距離がいいのに。

 仕事がうっとうしいと思う日が来るななんて。

 本当に驚きだ。


 今まで同じ部署にいたからそんなに気にしなかった。

 学生時代の恋愛とはまた違う感じだ。

 心配しても自由に会いに行くことができなくて

 昇進したから今までの責任の2倍ある感じだ。

 両肩が重くなる。


 安らげる時間はあまりないことが、つらいな。

 食事にも気を使わないといけないし、まぁまぁしんどい。

 仕事だから当たり前なのに。

 自称元カノに嫌がらせされている気配もない。

 今のところは安心だ。

 けれども俺のほうが参っている自覚はある。

 癒しが欲しい。


 カノジョがいてくれてよかった。

 今日もおいしい晩酌ができる。

 それで満足だったはずなのに。

 手料理が食べたい。

 腕枕したいし、膝枕してもらいたい。

(こんなことを思うなんて……変態なのか、健全なのか)

 

 まぁ、フルタイムでお互い入っているから甘えられるなんて余裕ないんだ。

(子供とマイホーム欲しいな)

 些細な願いも、もうぜいたく品らしいが。

 モラルが許す範囲でずっとくっついていたいなんて重症にもほどがある。


 迎えてもらいたいという思いもあるが、

 終電間近で二人で走り出す日々も幸せと思うくらい。


 仕事終わりのいつもの大衆居酒屋に行く2人。

 もう常連として認識された気もする。

「なぁ」

「うん?」


「一緒の家にすも?」

「は?」

「だって会えないのつらいし」

「はぁぁぁ? ムードもへったくれもないじゃないですか。

 いいけど、提案はやり直しですから」


「やっぱ、女の子はそういうの気になるんだったなぁ」

「しみじみしないでください」


 俺はいつものビールを一口飲んで、詳しく聞いてみる。


「そういう理想的な場所ってどこになるの?」

「んー? ネズミの国の提携ホテル?」

「高い場所好きだよなぁ。女子って」


「誰と比べているんですかぁ?」


 やばい。地雷踏んだ。

 しかし時間的にも体力的にも難しいだろう。

 時間が取れないことが壊滅的だ。

 近いところでいいところ探すか。

「楽しみにしていてくれよな」

「はい♪」

 どこにしようかなと悩むのもまた恋愛の楽しみだな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る