第3話 朧月夜の君とのお話2
今日は兄と朧月夜の君とが再会する日である。
夫には私が兄に会いたがっていると伝えてくれるように頼んでおいた。そのうち来るだろう。
夜遅く夫が帰ってきた。
「今帰ったよ。」
「おかえりなさいませ。いかがでした?」
「豪華な宴だったよ。遅咲きの二本の桜が見事だった。」
「右大臣家は、いつでも最先端ですものね。」
「ああ。源氏の君は見当たらないなと思っていたんだが、夜も更けたころにいらしたよ。」
「あら、そうですのね。」
「目立っていたよ。みんな正装なのに、
春の装いだね。おしゃれさん。夫は続ける。
「でも、酔って気分が悪くなったみたいで途中で退出されたよ。」
「あら、大丈夫かしら。」
「ね。そのあとは私も帰ってきたのでわからないんだ。」
「いえ、ありがとうございます。」
ふむ。きっと
数日して、兄が訪ねてきた。機嫌がいい。また
「藤の宴はいかがでした?夫がおにいさまがたいそう美しく登場されたと話していましたわ。」
「そうかい?久しぶりに女一の宮さまと女三の宮さまにお会いしたよ。」
「ふふ。それだけですか?かの朧月夜の方とはお会いできましたの?」
「ああ。見つけることができたよ。」
「どうやってお見つけになったんですの?」
ふふふと兄が笑う。
「酔っぱらって気持ちが悪い振りをして宴を抜け出してね、寝殿の方に向かったんだ。」
「まあ。お悪いこと。」
「そして、東の戸口の方から入って、気分が悪いのに盃を勧められて大変だから匿ってくれと言って御簾の中に上半身だけいれてみたんだ。」
「おにいさま・・・御簾の内側は・・・」
「ふふ。軽く注意はされたよ。」
「そうでしょうね。」
「確かに女宮がいる場所だったので軽々しいふるまいだったとは思うが、こないだの彼女がいるかもしれないと思ってね。」
「まあ、そうですわね。右大臣の姫君が勢ぞろいでしたの?」
「ああ。でもどの方かわからなくてね。「扇を取られて、からきめを見る」と言ってみたんだ。」
扇を取られて、つらいめにあう。と、本来は帯だ。
「そうしたら?」
「変わった
と、とても嬉しいという風に話す。
これって、もし人違いだったらどうするんだろうか?
「探し当てることができてようございましたわね。」
「ああ。」
これから右大臣家にも通うのかな。敵陣と一緒なのに根性あるよね。
「またいらしてくださいませね。」
「ああ、またすぐ来るよ。」
そうして、兄は帰って行った。
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