第4話 末摘花の君との話 ・紫の君との日常

「最近は正月の七日に行ったよ。にぎやかなところにばかりいると、あの寂れたお屋敷が思い出されてね。」

「そうですの。」


 意外といい関係のようだ。


「色々差し上げた甲斐があって、お屋敷の様子も人並みとなっていたし、姫君の衣装も以前より良くなっていたよ。」

「それはようございました。」


 本当に。その支援続けてあげてね。


「姫君はとても無口だが、少しはお返事をくれるようになってね。年を一つとったからかな。」

「ふふふ、いい関係が築けそうですわね」

「ああ、それにしてもあの赤い花はいつ見ても見苦しいが。」

「そんなことおっしゃらないでくださいまし。」


 いい人なんだよ。何年後かによくわかるよ。



「二条院の方(紫の君)はお元気ですの?」

「ああ、日々健やかに美しくお育ちだよ。亡き尼君が古風な方だったから歯黒はぐろめもまだだったし、眉も整えてなかったので先日整えたんだ。よりいっそう美しくなってね見ていてとても楽しいよ。」

「お会いしたいものですわ。」

「君ともよく似てきたと思うよ。」


 ということは藤壺の宮ともですね。


「まあ、嬉しい。普段は何をしてお過ごしですの?」

雛遊びひいなあそびや絵を描いたりしているよ。ふふふ」

 兄が思い出し笑いをしている。


「何か思い出されて?」

「先日、絵を描いてね、髪の長い女を書いては鼻を紅くしたんだ。それでもすこし嫌だなと思って、ふと自分の顔を見ると、とても美しいので、自分の花も紅くぬってみたんだ。すると、こんなに美しいと言われる顔でも、見苦しくなるんだ。」


 自信満々でびっくりだ。事実だけどさ。


「なにをされているのですか。」

「ふふふ。それで、かの君にに、こんな顔になったらどうする?っと聞いたら、嫌だというんだ。だから、取れない、主上おかみに怒られる。と言ったら、かわいそうにっとぬぐってくれたんだ。楽しかったなと思って。」

「楽しそうで何よりですわ。」

「あの方は本当にかわいらしいよ。」


 紫の君への愛情は日に日に増していくようだ。幸せそうでなによりである。

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