第3話 末摘花の君とのお話3
喉が渇いたので女房を呼びお茶を用意させる。おやつに唐果物も出してもらった。
「その状態で
後朝の文は早朝に送るのがマナーだ。相手を熱心に思っていることが伝わる。
「・・・夕方に・・・」
「そんなの不満ですと伝わってしまうではありませんか。それで、次の日もちゃんとお通いになりましたの?」
貴族の結婚は三日続けて通わなくてはならない。落ちぶれているし、正妻ではないとはいえ宮家の姫なのだから一夜だけのお相手にしないだろうと女性側も思うはずだ。
「通わなかった。」
「・・・・・・」
「彼女からの返歌は、古臭い灰色に変色した紙で、手もしっかりとした古風な文字で、上下もそろえて書いてあって・・・後悔したんだ。でも、お見捨てするつもりもないし、一生面倒見るつもりだよ。」
生活が救われたという面ではいいのだろうか。
女としては屈辱だろう。
「そうですか。それは、わたくしからもお願いしますわ。」
「でも、そのあと朱雀院の行幸があっただろ?とても忙しくてね。
「ようございましたわ。わたくし、その姫君のお人柄は悪くないように思いますわ。」
「そうかい。確かに、そうなんだろうね。」
ちょっと考えたのだろう。少しでも待遇がよくなればいいなと言ってみた。寵愛はないだろうが。
兄は続ける。
「それで、私は姫君に理想を求め近づいたんだが、それとの違いをはっきり確かめようと思って彼女を明るいところで見たいと思ったんだ。」
そうなのだ。相手を見たことない恋人関係もあるのだ。
「ご覧になりましたの?」
「ああ。雪を一緒に見ようと誘ってね。」
「・・・」
結果を知っているだけに、続きを促せない。どうしよう。
「彼女の姿は、予想通り、座高が高く胴長だった。そして、鼻が、鼻が
それでもよく見てる。そして、長い!細かい!いつもよりも長く細かいのはそれほどの衝撃だったのだろう。
「古風な装いですわね。」
「そうなんだ。しぐさもすべて古風で田舎じみていて、またどんなに話しかけても口が重くて・・・帰ることにしたんだ。でも、彼女の痩せた様子や屋敷の困窮した様子、それに彼女自身のことも考えるとね、これは故父宮が姫君を心配して私と呼んだのかもしれないと思ってね。彼女の生活を支援していこうと思ったんだ。」
よかった。こういうところは真面目で面倒見がいい。
「おにいさまの一度関係した方はお見捨てならないところ、とても素晴らしいと思いますわ。」
「ありがとう。」
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