最終回 シアの辿り着いた場所②〜数十年後…この話、もう終わってるじゃんって誰かが言った。

 僕とシアが一緒に入れなくなった日

 僕から俺になりシアと別れたあの日 

 俺がシアを受け入れられなかった日


 あの日シアが犠牲になった

 本来は俺も味わう筈の地獄

 狂う程の絶望と嫉妬と苦痛

 

 耳を削ぎ、指を切り、バイクと共に燃える


 全部シアが…受け止めてくれた


 俺はあの日から怒ってない

 怒りと言う感情を捨てた訳でも無い

 ただ、ずっと、蓄積させている

 顔を覚えた、声も、仕草も…

 ずっと心の引き金に指をかけたまま

 見つけたら…知ってしまったら…

 

 必ず殺す、シアの分まで苦しめて、殺す


 このまま無ければ、無いまま死ぬならそれでいい


 だから頼むから…俺の眼の前に現れてくれるなよ 



――――――――――――――――――――――


 ふと、思い出す訳では無い。

 私は自分で思ったより思い出に囚われているようで…

 昔の事、本当に色んな事があった。

 正直、毎日昔のアルバムを見る。

 私とタロァが繋がっていなかった時のタロァの写真を見て、そしてこれまでの私達を見る。


 そんな私を見てタロァは…


「シアは激動の人生だもんな、30代になっても未だに歌手として活躍してるじゃないか、自慢の嫁さんだよ」


 タロァはいつも私を励ましてくれる。


「ねぇタロァ?それは違うよ…仕事の事よりも…私はタロァとの事が人生のハイライトだから。そして…」


「フガガアー…フピィ〜…フガガアー…」


 小学校に入った娘が大股開きでいびきをかいて布団で寝ている。


「鼻詰まってるなぁ、取ってやろう…」


「あの子が生まれて…普通に生活して…今を生きている…その事が何よりも幸せなんだよ」


 犬山の名字に戻し…生まれた娘に名付けた犬山亜沙子。


 男だったら◯太郎と名付けたかったけど…私はそしてタロァも子供が生まれにくい体質だった。


 人工授精で出来た子供…それでも私とタロァの子供…幸せというのは常に掴み取るものだとしたら…私は掴み取れたと思う。


「タロァ…男の子じゃなくてごめんね…でも…本当にありがとう…会ってくれて…選んでくれて…愛してくれて…」


 タロァは昔から変わらない、はにかんだ様な笑顔でいつもの様に言ってくれる。


「それ、俺の台詞だわ(笑)でも…本当に…沢山の事を…ありがとう、シア…愛してるよ」


 素敵な毎日をタロァがくれる


 苦しんだ日がまるで、夢のように…


 私が救われた様に、タロァも幸せならそれで良い

 タロァ…大好きだよ…ずっと…


 

――――――――――――――――――――――


『オレはNTRの権化!その名は恋愛プロフェッサーであり、またの名を恋愛総大将!タツだ!』


 何言ってんだコイツ…私は心から叫んだ。


「良いからタロァを返して!アサコと私にタロァ返せよタツァ!!」


『安心しろ!お前等の子供はイカ臭いお姉さん方が預かった!お菓子もゲームもある!男達には爆弾付き首輪をつけた!言う事をきけい!』


「タツァ!イカって何だ!何考えてんだっ!やめろぉぉ!!」



 ざわざわザワザワ…


―アレ?シアラさんじゃない?あんな人まであの人は…―


【不知火総本部・大決議場】


 そう書いてあるのは巨大な邸宅の看板。

 そこの前に私達はいる。


 何でこんな所に集められたのか、意味が分からない。


 周りの皆も『お子さんと旦那はNTR、私に感謝しろ』と言うダイイングメッセージみたいなのと共に地図が書いてあるだけだった。


 周りには多分、家族を人質に取られて不安そうな女性ばかり…その夫達…私の場合、タロァは…首輪を付けられ男達数十人でタツァの乗る御輿みたいなのを担いでいる…地獄絵図だ、夢であって欲しい。

 

『ヒロと眼鏡は既にドヤ顔でワラワラ引き連れ入った、烏合の衆をな!しかしオレの恋愛維新軍だけがまとまらない…男共、女を説得しろ!【ガタッ】グワッ!?』


 男達が全員一斉に御輿から手を離したのでタツァが落下した。

 それぞれの奥さんの所に行き、話している。


「タロァ?どうしたの?タツァになんかされた?逃げよう?ね?タロァ?」


 私は必死に説得した、どうせ首輪の爆弾も嘘だ。


「今回だけはちょっと付き合ってあげようよ」


「タロァ!いつも今回だけってタツァに甘い!私にもっとその分、甘えさせてもいい!♥」


 私が喋ってる途中で抱きしめられたから、興奮して変な台詞になった。


 何か見知った顔が近付いてくると思ったらメグミた。


「ハァハァ…やっぱりこんな事に…シアさんも落ち着いて…みなさーん!聞いてくださーい!」


 メグミの説明によると、根多夫婦の長男、タツヒロ君が脳破壊されて、その復讐を双子のテルコちゃんがするらしい。

 その為に威嚇行為としてそれなりに名の通った人を集めて威嚇する必要があると言った。


 確かにタツァはともかく、旦那さんのヒロさんやタツヒロ君は知った顔だ。

 タツヒロ君は最近、目に見えてイカれて…失礼、おかしくなっていたのはそのせいなのかな?

 脳破壊?


 正直全く意味が分からないけど、同じ子供を持つ親として子供を出されたら協力せざる得ない。


 しょうがないからこの馬鹿の祭りみたいなのに付いて行った。


 タツァは建物の入口が分からず御輿の上から蹴りを放ち建物の壁を壊していた。

 この人、とうとうドアという文化をうしなった、人間以下だ。


「さぁさぁ!盛り上がってまいりました!聖帝十字陵まであと僅か!」


 何がだよ、全員死んだ目だぞ。


 中に入ると百人以上の人がいた。


 タツァは踊っている様に見えるがアレだ…あの変な姿。型を高速でやるとなるとか言う意味不明な姿。

 三面六臂で上半身だけ3つ4つに見える、下半身は2つに野太い尻尾が生えていて先端がコケシになっている。


 中では五角形のテーブルにそれぞれ1人、5人だけが座っていて、その後ろに大勢の人が立っている。

 ただし…


 こちらから見える男女2人は後ろの人含め白旗を降って恐怖に怯えている。


 それともう一人目立つのは…後ろに誰もおらずちょこんとイスに座っている女。

 今にも泣き出しそうな顔で…俯いていた。


 何なんだろう?この会は?

 そして男?が叫んだ。


『不知火の法律!内輪は不戦の誓いを立てている筈だ!これはそれに反するのではないか!?もしも破れば破った者を全員で潰す!そういう約定の筈だ!』

 

 この声…振り返った時に見た顔…


 私の頭が真っ白になった。

 コイツだ…コイツだ…コイツだ…


 私はまだ芸能の世界にいる。それでも会わなかった…


 最初に私に薬を入れた奴…母さんを騙した奴…動画にいた奴…私の尊厳を!私の全てを壊した奴!


 定満神楽…名前までは知っていた。


 知れば知るほど遠くなった、裏社会のトップクラス。

 姿も殆ど現さない、見たとしてもコイツに逆らえば消されるから。

 メグミや不知火でも分からなかった。

 何故ならコイツは…不知火の幹部だからだ。

 

 私は気付けば身体がすくんでいた。

 怖い…怖いよタロァ…



 ポスッ


 一瞬、頭に手が置かれた。いつもの温かい手。

 ポソッと聞こえた声…優しくて、強い声。


『シア…タツさんごめん、無理だわ』


『構わん、存分にざまぁせよ!待て、全員いっぺんに手を離すな、あ!?』


 グシャ


 タロァの顔…始めての…いや、動物園の時に見た顔…周りを憎み怒りを押し殺していた顔。

 違う、今は押し殺して無い…怒っている!

 

『シアァっ!コイツだよなぁっ!?お前を!おまえおおおおおおおおおおお!!!』


 それぞれの怒号が響く、飛び出す人達。

 

『殺すッ!絶対に殺す!シアを悲しませやがって!』

『アイツだぁぁ!桐子を!アイツがぁ!』


 分かる…私の為に…多分、私達の過去の過ち…それを過ちにしない為に…彼等が怒っているのは過去の事ではない。

 タロァ…絶対許すマンじゃないね、絶対許さないマンだ…


 未だに傷付いている私達の心…誇り…タロァの声が聞こえる。


―これは自己満足、ごめんな…それでも俺は、シアの幸せを脅かした奴を許さない―


 んーん、ありがとう…ずっと優しかったタロァが怒るなら…それはきっと…私達家族にとってもきっと…


―サラ、シア、チカラヲカス、ラファエラ、ヤルゾ―

―マカセロ、タツ…イガイナラ、マケナイ―


『タロァアアアアアアアアアア!!!』

『おにいちゃああああああああん!!!』


「ウワァ、殺人エルフ姉妹!!」


 タツァの声が聞こえた気がした…その後の事は覚えていない。

 





幼馴染の彼女をNTRされても僕は絶対許すマン、しかしもう一人の学園一の美少女である幼馴染が「それが許されるのはサバンナだけ、動物園では許されない」と恫喝する。僕は2人の幼馴染とそっと距離を取り…また再構築した♥


 終わり?




―これはNTRとざまぁの螺旋、次のNTR物語に続くラブコメだ―


 

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幼馴染の彼女をNTRされても僕は絶対許すマン、しかしもう一人の学園一の美少女である幼馴染が「それが許されるのはサバンナだけ、動物園では許されない」と恫喝する。僕は2人の幼馴染とそっと距離を取るが…? クマとシオマネキ @akpkumasun

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