突然のタロァが独白〜ここから始まるそれぞれのepilogue〜

 夜の星を見る 僕は流れ星を見た事が無かった


 ある人から聞いた 死んだ人は流れ星になるらしい


 僕の想像の物語で 僕は高校三年生で死んでいた


 愛する人に手紙を送り 愛する人に指を送り


 仲良くなれた義妹を悲しませ 見守ってくれた幼馴染を苦しめて


 最後は愛する人達に手をかけさせて 自分だけ楽になった


 何かを諦めたつもりで 心からありがとうと言わず 


 結局は後悔だらけで 心からごめんなさいと言えず


 誰にも心を許さず 誰も許さなかった僕だった


 周りの人は僕を許していたにも関わらず だ 


 『僕』という愚物は どこまでも人を不幸にした


 変わろうとする周りの人達の足を引っ張る愚物


 一番に変わら無ければいけないのは…



 『俺』という虚勢は 何を変えたのかな?


 『俺』になって沢山の流れ星を見た


 それは高校三年生で死ななくなる事で流れた光


 きっとそれは星ではなくて 皆の夢の軌跡


 『俺』になることで 『俺』の周りの夢が死んだ 


 だから 矮小な俺の出来る事を見定めよう


 後悔 するな 諦め るな 


 大事な心 は 譲 らない


 


 例えば…記憶を失い 才能を失い 愛情を失い 優しさを失い 犯罪者として未来を失ったとする


 でも俺はずっとそばにいる 安心して 俺だって同じだから

 それでも失ったあの日 俺は確かに見たんだよ

 君が伸ばした手 確かな心 それを信じる



 例えば…家族を失い 誇りを失い 嫉妬にまみれ 欲望に目覚め 普通では届かない高みに行ってしまい それでも独占欲に駆られたとしても


 俺に出来る事はしてやりたい 大丈夫 もう心は折れないよ

 何てことはない あの日に見た遥かなる高みに比べれば

 俺にだって受け止められる そんな気がするんだ


 そして例えば…子供を産んで 次に繋げる

 俺にもいつかは家庭が出来て 子供を育て 次に繋げる日が来るかも知れない


 その子に言ってやるんだ ゆっくりと 優しく


『まずは自分を許してあげる事から始めよう』


『そうすればきっと 大事な人を許せる筈だよ』




 そして例えば…俺が死んだら 流れ星を見つけたら


 懺悔でも 憎しみでも 想いでも 祈りでも


 タロァでも 先輩でも 太郎でも お兄ちゃんでも そっと名前を呼んで 願って欲しい


 笑いかける事ぐらいなら出来るから

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