メグミは4らない所、Ⅸらい所で、13を探すのはやめ、ただ自分の道を19のみ

「お前ら、なんでぇ?って好きな?なんでだろうな?オレは悩む、なんでぇ?ナンディー?ウ~ン…コ」


 この主犯は自分が何をやっているのか分かっていない。

 そして俺がやった事、暗転さんにセクハラをし、暗転さんはまんざらでも無さそうだった。

 それだけ…何も変わってない。

 いや、シアは?メグミは?


 シアは少し落ち着いたのか、それともこの状況に慣れているのか「タロァ、もう一回頭からやり直してくれないかな?…」とか言っているが、メグミは…頭を抱えて絶望している。

 そしてこちらを見て一言…


「な、なんで?暗転さんとお兄ちゃんが?サラとシアで…揺れてるんじゃ…」


「ナンディー、このオレがお前の疑問にお答えしよう。そして相談に乗ってやる。NTRだろ?任せておけ。レースは常に公平校正に、それが鉄則だ」


 タツさんがしゃしゃり出てきた…ナンディーって何?メグミ?とにかく誰か止めないと…そこに救世主が!


「タツ姐さん、駄目だぁよ?メグミ…というか犬山家については私が一任されてるだよ?メグミもな、太郎君とワラシがなんかある訳ねぇろ?偶然ら、偶然。まぁこれでワラシに惚れちまったらしゃーにいけどな(笑)とにかく若者達は自分のペースで、恋愛をだな…グワッ!?」


 以前同じの様な状態になった時に止めてくれた人だ!確か暗転さん!

 しかし、タツさんが喋っている途中の暗転さんの着ているパーカーを下から捲りあげて、両手を拘束するように顔で袋状にした。

 さながら宴会芸の腹芸のような姿に…

 そのまま片足を顔の袋に固定しまさにY字バランス…黒のセクシーな下着と足首まであるサンダルの様なブーツだけのおっぴろげ暗転さん…

 そして何かスプレーを暗転さんに散布するタツさん。

 その直後、暗転さんは痙攣しクネリクネリ、そして暗くてよく見えないが、何か身体中からワサワサと虫らしきものが離れていく…


「この虫馬鹿、眼鏡に似て諫言ばかり使いおってからに、お前なんかこうだ!」


「ガガガッ!?媚薬入り殺虫…剤?…何てこと…やめるだぁよ!姐さん!ヒロ兄さんにチクるだ!絶対チクるだよほ!?『パンッ!』ガ…ガ♥…いやら…コレは…あの悪夢が…あひいいいいいい♥」


「暗転、貴様は今…タロァマンに誘惑され心が堕ちかけたので感度100倍にする事で正気を取り戻そうとした、自分の意志で…な…」


「グゥッ!誰がそんな頭の悪い事するだよ!?そんな知能指数の低い事するのはタツ姐さんだけら!今ならまだチクらないろ!だからすぐバレる嘘をいつもいつもうがぁぁぁ!?」


「オレが!以前本当にやった事を馬鹿にするなっ!」


 正しい事を暗転さんが言っていたがタツさんは無視し暗転さんを頭から俺の部屋にある大きめゴミ箱に突っ込んだ…小さな声でイヤだって聞こえる…

 

「あぁ、暗転さん…あの強くて優しい暗転さんが…」


 まるで生花の様にゴミ箱から、股と片足だけ出し、足が時折ピーンッとする暗転さんの姿にメグミはショックを受けていた…ていうかメグミは知り合いなのかな?


「さぁ、恋愛相談…聞こうか?あんなゴミ箱から生け花みたいに絶頂足ピンさせる昆虫内カーストの上位ではなく、工事現場内カーストのトップクラスの…この私がな!」




 まだ薬が聞いているのか、それとも恐怖からなのか…頭を抱えながら…メグミは語り始めた…時折、俺とシアを見ながら…


「分かりました…私は!…お兄ちゃんを…愛してます…でも!自分でも分かっているんです……血は繋がっていなくても兄妹で…お兄ちゃんにその気が無い事も…お兄ちゃん…昔はシアさんが好きで…今はサラに気持ちが傾いていて…大好きなお兄ちゃんだから…応援しなきゃ…諦めなきゃいけないのに…こんな私でもお兄ちゃんは優しいから…優しく格好良くて…一緒に住んでていつも見ていて…こんなに好きなのに…距離がこんなにも近いのが…ツラいん…です…グス…そして…暗転さんがいなければ…皆に酷い事を…」


 メグミは話がまとまっておらず唯、感情のまま喋っている感じだった…メグミの気持ちは分かっていた…分かっていたが…それは一線を超えてしまう事と一緒で…更に言えばあくまで妹として、とても大事に思っている…そこに恋愛感情は…


「メグミ…俺はお前の事をとても大事に」


「相変わらず長いな…初めてを大事に、幼馴染NTRは特にな?でもナンディーは経験者だよな?しかも前後どっちも。は~ん、分かったぞ?ナンディーは他の男にNTRてしまった、だから告白出来なくなっちゃった、俗に言うNTR女だな?しかし難しいな、シャーの場合、考えようによってはデッカイウ○コが出たり入ったりした『やめてっ!何言ってるのっ!?』と思えば良い。しかしナンディーの場合…これは入れたものがおもちゃか?縦笛?スプーン?食べ残し?なんだコレ?『ちょっとっ!?何でそれをっ!?』しかし膜が無いとなるとこれは困ったな…おいタロァマン」


 今、サラとメグミが何か叫んだが?ナンディー?膜?人が話している途中に突然喋りはじめたと思ったら、タツさんが訳の分からない事をペラペラ喋りはじめた。何の話?


「聞いてんのか?タロァマン?お前が初めて厨ならこの話は終わりだ、ナンディー・ジ・エンド。シャーは九死に一生を得た。しかし唯一つ、ナンディーに攻略法がある。オレの憎き旦那の元カノは『男は馬鹿だから始めてかどうかなんて言わなければ大体分からないのよ』と外道コメントしていたからな。言わなければ分からないらしいぞ?」


 それ、なんのこっちゃ分からんが俺にバラしたら意味ないというか、俺にする質問じゃなくない?シアのは良く分からんし、メグミに至っては全然何が何だか…

 その二人を見ると、口をパクパクさせている…ん?…急に二人がタツさんに飛びかかり揺さぶり始めた!?


「信じられないっ!何でそうやって私の心の傷口を大きいウ○コとか言うんですかっ!?頭おかしいんじゃないですか!?」

「何で私の秘密を知ってるんですか!?しかもお兄ちゃんの前でベラベラ喋りましたかっ!?何考えてるんですかっ!?馬鹿ですかっ!?」


 飛び掛かって糾弾する二人をタツさんは投げた…


「うおお!?お前ら謀反か!?いきなり飛び掛かるのはビックリするからやめろっ!相談中に飛び掛かってくるのはドックトレーナー対躾の出来てない犬だけで十分だ!馬鹿かお前ら!分かった分かった、仕切り直しだ…」


「んじゃ提案!まずシャー、事務所の社長に頼んでタロァマンと同じクラスにしてやる、それで手打ちだ。それとナンディーだが…タロァマンと毎日一緒に寝る権利をやる。それでどうだ?」


 完全に俺の人権を無視した決定がされた。

 しかし、シアが手を上げながら不満を口にする。


「それはズルいです!確かにクラス一緒は嬉しいですが…毎日寝るっておかしいです!だったら…その…私も…モゴモゴ…」


「うるせぇな、だったらこうしろ。一週間に一回ぐらい、隣の覗き女と合わせて3人、計四人だな。一緒に寝ろ…以上だ、完璧なタツ裁きであ…あっ!?」


 何にやらジーッとスマホを見ながら油汗が出るタツさん。

 あまり良くないがチラッと覗く…旦那さん…ヒロさんからだ。


『おい、暗転と連絡つかないんだけど?お前なんか関わってるだろ?正直に言え、今すぐに…そして電話に出ろ』


『re:関わっているのはタツじゃない、すぐ疑うのは悪い癖』


 ブーッブーッブーッブーッ


 着信の音が鳴り、電話に出る。


「いかが致しましたか!?落城寸前ですか?…はい、はい、あー…はい、いや、それはタツじゃないと思います。えぇ、はい、タツじゃなければ…タツじゃない対魔忍…といった感じの人でしょうか?拷問ですか?だったら私が拷問しておきましょうか?私を?何かの間違いですよ?聞いてますか?もしも〜し…プツッ…くぁっ!だからミジヒロなんだっ!」


 ドサッ…スマホを落とし絶望的な顔をしている…まだ知り合ってから短いが、この人は何回同じ失敗を繰り返すんだろう?ユラリユラリと暗転生け花を引っこ抜く。


「フヒィィィ!♥身体が!♥皮膚が♥腰がっ!♥ギギっ!♥絶対♥チクるだよ!絶対にッムグ!?」


「真言出せないと…虫コントロール出来ないだろ?殺虫剤拭いてやるから感度百倍で虫の這いずり頑張れ…途中の山に捨てるから…オレはヒロの所に行く…あぁぁ…やだなぁ…」


「ムゴアアアアアアアッッッ!?!?♥♥♥」


 顔の所が袋状になったパーカーの中で、多分泣き叫んでる暗転さんを身体を適当な布で拭いたあと、暗転さんの片足を持って引き摺りながら出ていった…


 どうすんの…コレ…居なくなったけど…ちょ…


「お、お兄ちゃん…その…分かった…?意味…」


 そうだな、流石に今こそ鈍感である重要性が活かされる時だが…残念ながら俺はそこまで鈍感な人ではない…


「そうだな…俺は始めて厨?とやらではないし、そもそも始めてかどうかなんて気にしない…何故なら蘭子の時に…浮気しまくる蘭子と、願わくば卒業までにチェリーだったら蘭子と致すつもりだったからな…ただ、メグミ…あんまり俺のもので…その…」


 ここまで来たら正直に言う…しかない…


「嘘!?…酷…くはないか…私達も…大概だもんね…でも…お兄ちゃんは私やシアさんに愛されてるんだよ…それだけは分かって欲しい…他は忘れて良いけど…それに最悪の未来も見たんだ…絶対に死んじゃ駄目だよ?私、あんなの嫌だよ…私は暗転さんのおかげで…心のままに生きる事にしたの…」


「メグミと同じく…言い訳にしか聞こえないかもしれないけど…何があってもずっとタロァが心にいた…後少しで卒業…卒業したらタロァの家の近くに住むつもりだった…嫌われても良い…側にいたがっだ…ぼう…ばなれるのがいやらからぁ…」


「そうか…でもゴメンな…少なくとも…俺はサラの問題が、解決するまで誰とも付き合わないと、決めてる。それでも良いか?」


 返事は分かっていた…彼女達は、本当はとても強くて美しいから。

 俺は…最早説明の要らない超有名人のシア、そして街でスカウトされ、暴れるまでは沢山の男から告白され、その都度スタンガンで追い払った事のあるメグミ…


 そんな二人から全力の好意を…告白を受け取って…断った…いつか…将来、自分はどう思うのだろうか?

 サラこそ自分から会わないようにしているんだから…深く考えずにとりあえず誰かと付き合っとけば良かったとか、後悔するのだろうか?


 いいや…心に従うんだ…俺が決めたんだ…

 皆が言ってくれたから…決めた事に後悔はしないで…と。


 結果的に…グチャグチャにされた気はするが…それでも整理ができて、迷いは無くなりサラの事に集中出来るようになった。感謝すべきなんだろうな、タツさん達に。



 それから夏休みに家族と旅行、新学期には俺のクラスにシアが来て…シアとメグミが奇行を行うようになって周りから敵意を持つ人が離れた。


 シアはモデルやタレントをやめ、母親と懇意にしている事務所もやめ、別の事務所で歌手に専念した結果、学校に来るようになった。


 メグミはたまに家に出入りする暗転さんと何かしている。ただ、身体が少しゴツくなっていた。


 蘭子は悪阻が来たりしていたが、お腹の赤ちゃんは少しづつ成長していた。


 俺はサラに何とかアプローチ出来ないかヨータや鬼頭君と色んな角度から行動を起こし、何も結果が出なくても努力を怠らなかった。


 俺の周りにはいつもそんなシアとメグミが、蘭子とヨータがいた。

 学校ではいつも5人で、終われば鬼頭君もいて、いつも誰かといた。

 

 それは高校最後の短い時間、刹那的ではあるけど…忘れられない楽しかった時間。


 そこにサラはいなかった……俺達の周りに…学校に…バイト先に…図浦家に…俺の知る場所にはどこにもいなかった…会おうとしても、連絡を取ろうとしても取れなくなった。

 ただメディアでは【釈華shaka】の名前だけが急速に肥大化していった。

 悪夢と違うのは…サラから連絡が来なくなった事。

 それはゆっくりと、だけど距離を取るように。

 もしかしたら…俺が会おうとしたから…しっかりと話し合いをしようとしたから…


 そして12月…灰色の髪、その姿はシアをゴテゴテの化粧で固めた…いや、違う何かで塗り替えた様なシアと同じ東欧系の女性。

 肩書きは彼女が大好きだったイラストレーターという職から…熱狂的…いや、狂信的なファンを待つハッピー・アーティストという名前に変わっていた。

 思い入れのある名前…彼女は【釈華shaka】の名を捨てて、【ラヴィエル・シャカラ】と名前を変え、怠惰と快楽を堕落を、元の声が全く違う歌声で、狂乱の様なステージで撒き散らす人形となっていた…



―――悪夢のあった12月25日は、確かに近付いていた―――




 一つだけ気掛かりが…いや、何処かで信じていたのかも知れない。だから俺は信じる事にした。


 バイト先のオーナーが教えてくれた。


 12月の頭頃、ラヴィエル・シャカラと名乗る前に一度だけ、本当に夜中に…女の子が古本屋の前に居て…絵を描いていたのを見たと言っていたから…

 


 

 

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