第七寝 メグミとサラの進学、シアに会えて良かった良い年始…どう思う?蘭子?

 義理の妹、メグミは俺の様な、ぼやーっとした犬顔ではない。

 どちらかというと猫顔で、母親のミヤコ義母さんに似て、目鼻立ちはしっかりしている。

 同い年でも少し前まで外見にやる気の無い…と思ったら高校デビューする気なのかいきなり派手派手な感じになったサラと違い、昔から小綺麗にしている。

 今日は初詣だから?なのか、分からんが眼鏡ではなくコンタクト。

 黒髪の前髪パッツンロングヘアーでボタンダウンシャツの上からダウンベストにパンツルック、まさに真面目って感じ。

 


 そんな妹が…


「ね、ねえ。おに、お、おお、おに…ゴホンッ!んんっ!お兄ちゃん!この御守りは恥ずかしいよっ!」


「お、お兄ちゃんとな!?よし!お兄ちゃんが買ってやる!バイトしてるからな!お兄ちゃんは!」


「なっ!?い、いい、いじわるだよっ!」


 そんな妹に俺は今…猛烈に感動している…義妹が俺の事を鬼ではない…「お兄ちゃん」と呼んだ…記念日だよ、これは。

 ニヤニヤしてしまい、妹は神社の境内でカーッと顔を真っ赤にした。


 受験という事で、神社に初詣…ついでに妹のメグミに受験の御守りを買おうと思ったのだ。

 そんで物色してたらメグミが小学生の時に好きだったブルドックのブル君というキャラクターの御守りがあったのだ!

 コレはどうだ?と渡した所、最高の反応を示す妹!

 

「じゃあ違うのにするかぁ…かわいいのになぁ…」


 なんて心では一ミリも思ってないが、俺は知ってるんだ。

 メグミが未だに、このブル君とか言う珍妙なキャラのグッズを集めている事をな…


「いや!違う!こ、コレで良い!ほ、ほら!拒否したらご利益が無くなるかも知れないでしょっ!?じゃあほらっ!お金払って来てよっ!バイト代で!奢ってくれるんでしょ!?ほらほら!」


 奢るって…流石に合格祈願の御守りぐらい買ってやるよ…まぁでもコレで志望高校に合格するといいな。支払いだけ済ませ、ニヤニヤしているお義母さんにじゃあ帰ろうか?と伝え帰路についた。


「あっ!あの…お兄ちゃん…ありがとね…高校…おにい…おな…絶対に行くから…」


 御守りを胸に、手で包む様に持つメグミ…そんなにあのキャラクター好きなのかな?それに「イク」って…蘭子じゃあるまいし(笑)


「あぁ…まぁな!妹の大事な勝負だ…これぐらいしか出来ないけどな!後、イクじゃなくて受かるな」


「…イク?ばっ!?そういう意味じゃない!バカっ!」


 一昨年の殺伐とした空気、去年のギクシャクした空気からは考えられない和やかな時間…諦める事で得られる心の平穏。

 これは蘭子から教わった事だ。


 家に帰りおせち料理をつまんでいたら、義母さんが独り言の様に呟いた。


「太郎さ…去年…色々な事してたけど、なんかあったの?…」


 義母さんは流石に気付いているだろうな、バイクやバイト…外から見れば去年の夏休みから怒涛の様な変化だからなぁ…

 でも俺にとっては特に何も無かったからなぁ。

 夏休み前のシアの件だけが去年の出来事として、心に残っている。

 外から見れば付き合ってもいない、幼馴染に頑張れって言っただけだけど…あ、蘭子と別れたか。

 今でも余りに自然に同じ様に接しているから忘れてた。

 義母さん返すように呟いた。


「ちょっと大人になれたかも…自分に出来る事、自分が良いと思った事、少しでも頑張らなきゃなって思ってさ…」


 メグミがジッと見ていた…目があったけど逸らされた…何だよ、惚れるなよ(笑)


 そうなんだよな、メグミとサラは受験、シアとサラは仕事もしてる。

 サラは良く分からないが、シアに至ってはそういうのに疎い俺ですら時の人になりつつあるのが分かる。

 俺の努力や苦労なんて比較にならないだろう。

 追い付けるとは思わない…けどな、いつか会えた時、俺も頑張ったんだぞって言いたいんだ。

 なぁ、蘭子…俺達も頑張ろうぜ。


 1月、新学期が始まり、2月にはメグミとサラの受験が終わった。

 サラは最初から俺の通う高校に受験していた。

 まぁ家から近いし、姉もいるし勉強のやる気は途中でガス欠のなったそうだ。

 そしてメグミも志望校に落ちて、俺の通ってる高校に決まった。

 つまり二人とも同じ、俺の通ってる高校に来てしまう…

 俺の学校での醜態はあまり見せたくなかったけどなぁ…

 

 とりあえずメグミに、本音ではまぁ全部落ちなくて良かったな…と思った。

 それだけは言わないように慰めに行ったが…


「んー?何その顔?あぁ受験?別に良いの。やりたい事が決まれば授業が楽な方がそっちに集中出来るし、勉強なんていざとなったら予備校行くし…私は望んでる所に行けたから別に良いの」


 あんまり落ち込んで無かった…どころかちょっと嬉しそう。サラも同じ様な事を言っていたな。

 勉強はやりたければやる、勉強以外で学ぶ時間が欲しいと。皆考えているんだなぁ…

 


「そっか、まぁ4月からよろしくな!」


 「よろしくね、先輩」と、メグミは少しだけ笑って返した。


 そんでまぁ…バイト休みにサラの合格祝いに何か買ってあげようと思ったが、サラがバイクに乗ってみたいと言うので仕方なく…日を改めて、近距離を少しだけ!捕まったら歩いて帰れ!そして違反金発生したらそれが祝い金だ!と約束させ、後日、街に繰り出した…が…


 俺はいつもバイクを売ってくれた鬼頭先輩の働く、バイト先の隣のタイヤ屋にたむろしているバイカーのおっさんから貰った服を着ているから、ボロボロのダブルの革ジャンにジーンズ、エンジニアブーツでいる事が多い。おっさんいわく…


「ロッカーズの正装は革ジャンとジーンズ…」


 嘘だぁと思いながら、貰ったの着てないとムスっとするからいつも着ていた。

 それに合わせたのか…サラが…少女漫画に出てくるパンクロッカーの格好で…まるで緑髪のチンドン屋だ。

 

「ど、どうっすか?パンク…っすか?」


「お、おう…」俺はパンクではない…


 そんな事がありつつ、借りてきたヘルメットをかぶせ出発日したが…


「ウヒョー!最高っすね!先輩!うひぃ~!」


 後ろでサラが煩いし、しがみついて来て大変だ…(泣)

 捕まらないように、事故らない様に普段の10倍ぐらい神経を使い慎重に走っていたが…それでもサラのテンションは最高潮…目立つなよぉ…


 そんな感じで、サラはヘルメットから出ている緑色の髪が風になびかせながらペラペラ喋るので、聞き流しながらお神輿バイクのノリでダラダラ走っていた。

 すると前に高級車が無理やりバックしようとしていた。

 車間距離が詰まってしまった県外ナンバーの軽を、クラクションや罵声を浴びせ煽っていた。

 軽自動車の運転手は若い親の4人家族の様だ…お父さんが慌てていて、お母さんがビックリしている。


 あんまり良い気持ちはしない…東京ではないとはいえ観光都市だ、恥ずかしいという気持ち…何だかなぁと思っていたらサラも気付いたようで、少し腰に回していた両腕に力が入る。

 何となく期待の眼差しがバックミラーから見える。


 …ん〜あんまり目立ちたくないけど…やるかぁ…バイクに乗ってると…いざとなれば逃げれば良いかというメンタルからかついつい気が大きくなりやってしまった。

 まず軽自動車の家族に声をかける。


「港の見える町、横浜にようこそ〜!楽しんで下さいね〜」


 軽自動車のお父さんとお母さんにはニッコリ、子供には手をふる。そしてそのまま高級車の横にバイクをつける、ちょっと後ろ気味に…サラには絶対に何かあったらいけないから。優しく丁寧に…


「地元の人間としては観光客にそういう恫喝はやめてほしいんすけど…?ちょっとは落ち着いて下さいよ〜」


 地元はヤクザも多いしな…丁寧にヘコヘコと…別にサラに情けないと思われても良いし…と思ったけど東京…品川ナンバーだから関係無いか…

 

「はぁっ!?いきなり出てきて何だテメーはっ!?引っ込ん…ぶっころ…てめぇ…」


 なんか凄い剣幕で何言ってるか分からない…すると奥から女の声で怒声が聞こえてきた。

 顔を見た…あぁ…こんなところで会えるなんて…


「煩いっ!どいつもこいつも知り合い面しやがって!嫌いなんだよっ!!どっか消えろっ!」


 怒ってるなぁ…大変なんだなぁ…疲れてるんだなぁ…頑張ってるんだなぁ…そこには凄いキリキリしたシアが眉間にシワを寄せていた。

 そして俺と目が合うと…目を見開いていた…

 懐かしくて笑っちゃったけど注意はしないとな。

 

「あ~…これはまた…アハハ、そーすね。さーせん。でもさ、後ろの車、地方から出てきた家族連れの軽なんだからさ、いきなりハザード出してバックしようとしてプッププップ鳴らして罵声を浴びせるのは良くないですよ!?ッてブはッ!」


 手前のお兄さんに裏拳された!?口がメチャクチャ痛ぇ!駄目だ、バイバイだ、俺は喧嘩は弱いし痛みに弱い(笑)


 ただ…成長した俺はムカつきを発散させたく、切った口の血を窓ガラスに吐きかけて、アクセルを吹かし進み始めると同時に中指を突き立てながら逃げた。


 後ろでサラが「バーカバーカ!」騒いでいる…と思ったらギュッーと背中に顔を埋めて来た…怖かったのかな?


「しぇ、しぇーんぱい!♥先輩っ!♥クンカクンカ♥先輩!♥先輩ィィィィ♥寒いでしょ?♥ほら!♥ほら!♥」


 何が…?と思っていたらしがみついて来た。力を入れ過ぎて俺ごと、どんどん猫背になっていく!

 良し!危ないから離せ!とりあえず目的の店の前にバイクを止めてサッと降りた。


「先輩ダメっ!!?先輩だぁめぇー!先に降りたらダァメェ!!」


 今度は何だよ…と思ったら俺が降りて振り返ったら、サラのタイトなミニスカートがバイクに跨っているせいでパッカーンと開き、ニケツの後ろシートは段差があり、高い位置で何も無い為、パンツがもろ出しになった。、

 至近距離の俺は正直中身まで透けて見えんばかりの勢いだ…いや、相手は中学生…何…やってるの…?


 慌てて急いで手で隠すサラ…まぁ相手は中学生…だけど黒い細めのパンツ…このセクシーと子供の中間…病みつきに…はならない。


「先輩っ!パン…見たんですか?私の…パンッ!?」


「いや、その先輩だけじゃなくて皆見たよ…正面にいた人皆…」


 サラが「ぐぅっ」と唸ったが無視した。

 しかしまぁ…口がキレて痛えし腫れて来たわ…ウケる顔になってきたな…いやぁしかし…シア…綺麗になったなぁ…


「大丈夫ですか?はい、ちょっと濡らして来ました…その…私の飲んでた水だから…間接キスですけども…?♥」


「相当遠回りな間接キスだから別に良いよ…」


 妹のサラとこんな事してるって知ったらシア怒るんだろうなぁ…

「タロァッ!色んな人!手を出すのは動物!」って。

 ついつい口元が緩む…シアの顔を思い出す…大変そうだったな…

 今、俺は幸せだと思う…シアと一緒の時も幸せだった。どっちがって言うと…選べないよ。

 

 後日、本題のサラの合格祝いだ。

 今日はバイクではない、殴られた顔が腫れて少し恥ずかしいが、電車で都心に出た。

 駅のファーストフードで待ち合わせ、先日とはうってかわって、受験が終わって入学が近くなり、サラは目立たない黒髪眼鏡に戻っていた。

 まぁ、流石に入学式に緑髪はアウトだろう。

 何やら今日はイラスト関係の仕事の挨拶だったらしい。良く分からんけども。


 入学祝いは桜のマークの100色の色鉛筆セットを買った。

 バイト先の店に遊びに来てた時に、様々な色の色鉛筆を欲しがっていたのを知っていた。

 子供の様にヤッタヤッタと飛び跳ねキャッキャッと喜ぶサラ。

 1万ちょい…だった。バイトしてて良かった…いやマジで。相手の欲しい物を買うって大変だな…

 

「フワァ…♥これは…私の一生の宝物にします!♥ンフフー♥使えないよ〜書けないよ〜♥」


「いや。使いなよ…まぁでも喜んでくれて良かったわ、そろそろ出ようか?…しかし中学生なのに都心の事務所に仕事の話とは凄えな。サラは…」

 

「まぁ仕事と言っても遊びみたいなもんですけどね、九州の時はネットでやり取りしてたんですけど、やっぱり直接イラスト見せたくて…私としてはデジタルよりアナログの方がイメージが…とっとっと…」


 黒髪で眼鏡のサラが真顔になったと思ったらすぐニヘラとなった。


「それにしても?ねぇねぇ先輩〜♥私達恋人に見えるのかなぁ〜?」」


 プレゼントを大事に抱えながら腕を組んでくる…どう見ても兄妹やんな。シアと違ってサラは小さいからなぁ…恥ずかしいなぁなんて思ったら…何かに見られている様な…あぁそうか…お前かぁ…


 ビルに張り付く巨人を見上げる…シアが専属モデルのファッションブランドのポスターだ。

 ついつい口角が上がる…と同時に治りかけていた口の傷が裂けた。


【自由に生きているか?心は鳴っているか?】


 2人のシア…現代的かつ挑発的なシア、幻想的で神々しいシア…どちらからも見下されて、俺は地を這う人、見上げていた。

 大きなポスターキャッチコピーを見ながら、俺は切れた口の痛みに顔を歪ませながら独りごちる。


「ハハハ、そんな高いところから見る景色はどんなだい?俺は自由を生きてるよ…」


 腕を組むのをやめ、足を止め、ポスターを睨め上げる様に見る…まるで仇の様に…


「まだ…姉の事が忘れられませんか?向こうは多分、忘れてますよ?何も考えてませんから」


 この子も…今となっては外見もシアに似てるんだけどなぁ…やっぱり雰囲気が違うんだよなぁ…でも何なんだろうね…小さな声で…ワタシじゃダメですか…て聞こえたよ。まぁそーゆー感じだよね…


「忘れられる訳無いよ…親友で、幼馴染で、好きだった人だからね。俺にはそんぐらいしかないから」


 だから一人で、結構。もう悔しい思いは沢山だ。


 分かってるんだ。叶わないモノがある。

 シアは太陽だった、太陽は掴めないんだよ。

 もしかしたらサラならって思うけど…知れば知るほど…サラは太陽の輝きを持つシアとは違う輝きを持つ月に見える。

 だけどね…結局、地を這う人からは月も太陽も届かないんだよ。

 そして、眩しいから…届かないから背を向けるんだよ…


「ほれ、何か食いに行こうぜ!飯食ってないんだよ!」


 手を引っ張って街を駆ける。


「あっ?えぇ?♥せ、先輩!さっきハンバーガー屋さんで食べてないんですか?」


 ハハハ、こまけぇこたぁ良いんだよ!

 つまり俺は地を這う虫以下の生き物だって事だ!だから…もう考えるのはやめて今を生きるんだから!

 


 地元の駅でサラと別れた。別の用事があるらしい。

何度も、このプレゼントは一生大切にするというから、大切にしたいと思うなら使えと言った。

 

 家に帰る前に…そのまま蘭子の家に行った。

 連絡が来てたんだ…新学期について相談があると。

 

「いや、単純な話。3年は太郎と一緒じゃなければ学校辞める…というか違う学校に編入しようと思ってるんだ…」


 昔だったら止めただろうな…落ち着けよ蘭子って言ってな。

 でもまぁイジメの片鱗を知ってる俺としては編入も一つの手だなと思ってしまう。

 3年になれば鬼頭先輩の圧力が減る…卒業するからな。すると2年の時とは比較にならないぐらいの、イジメが発生すると思う。

 蘭子は続けて言う…太郎はどうするの?…と。


「俺には…まだシアがいる。メグミとサラが入学式で入ってくるのである。今更引けるかよ…なんてな?本当は編入出来る知能が無い(笑)勿論そのままただ辞めても上手くやれる知能は無いぞ(笑)フリーターになるとしても中卒はム★リ★ダ」


「そりゃそうだね。だって私、結構勉強したもん。最近メグミと会ってさ、太郎が何か新しい理由が無い限り家出る気無さそうって嬉しそうに言ってるからさー…だったら家隣だから良いやって思ってさー」 


「まぁ特に出る理由もないしな、金も無いしな(笑)働いてよくわかったよ、実家の大切さ!それより聞いてくれよ…シアと会ったよ。凄いな。ありゃ化けたぞ(笑)ビル一面シアだった!」


 蘭子が笑いながら返す、いつものように。


「だろうねぇ…そして私達は幼馴染だったいう歴史を誰にも言えず、胸に秘めて死ぬのね(笑)諦めなさい、諦めるのよ太郎!(笑)」


 そんな馬鹿みたいな話をしながら夜が更けていく…


 帰ってからメグミや義母さんに『出稼ぎ行ってきました』と東京土産を渡し、ちょっと雑談して部屋に戻る。


 満月の夜…間もなく高校最後の年、進路を決める3年だ。


 8月頃、バイカーのおっさん達、つまり大人に言われた…

 幾つになっても青春を何て言うが、俺はお前の気持ち何て分からん、と。

 本物はもう失っているからなって。

 だからその瞬間を生きろよ、そしてバイク乗せといてって思うかも知んねぇけどよ?


    『絶対に、死ぬなよ』


 父さんが死んだ時…悲しかったなぁ…

 棺桶の前で、メグミが言ってたな。

 

『私のお父さんは私とお兄ちゃんのお父さんだけ。本当のお父さんは死んでる様なもんだ、だって何も思い出せないから』って言ってたな…

 俺の本当の母さんの事があるから『私はね!私は!』って慌てて訂正したけど嬉しかったな…


 けどさ…シアは…シアへの気持ちは時間が経てば死んでしまうのかなぁ。

 学校で会った時、偶然街中で会った時、ポスターを見た時、まだ燻っているのかなぁ…

 その日は何かを確かめる様に、シアと父さんと一緒に写っている写真を見てから眠った。


 その日、夢を見た。

 今のシアが…ポスターに写っていたシアが枕元に立っていた。綺麗だなぁ…シアは。


 んん?あれ?シア?何これ…夢?


【そうだ!夢だ、タロァ!会いに来た!タロァが願ったから!叶った!タロァが好きな!シアだ!】


 そっかぁ…でも夢でも良いや…シアに会えた…会いたかった…まだシアが残ってたんだなぁ…


 何か…ペンダントを見せて来た…あぁそれは…お別れした時にプレゼントしたアクセサリーだ。

 どうにかして泣き止ませようとして買って渡したアクセサリー、付けてくれてたんだ…嬉しいな…


【タロァ!これ付けてる限り!シアはタロァが好き!たまに見える様にするから!タロァとシアの証!好き!と好き!と好き!の証!ずぅっと一緒!約束っ!】


 うん、俺、ずっと…好きだったんだ…だから信じるよ…

 夢だから…良いよな…妖精の様なシアにキスをした…忘れない様に…マーキングをするように…シアと唇で重なった気がした…


 そして、シアは空に飛んで行った…妖精の様に…自分で飛べといったくせに…寂しいよ…行かないで欲しいなんて思っちゃだめだと…別れが寂しい何なんて…でも寂しいんだよ…俺は…シアが…好きなんだなぁ…


 

 朝、鳥の鳴き声で目が冷めた…変な夢を見た…シアと会えた夢…情けない事に涙の後があった。

 

「はは、は…女々しいな俺は…今更…な…」


 乾いた笑いをしながらベランダを見た…それは…確かにそれがあった。


 巨体な妖精、オリーブ色のワンピースを着てブロンドの髪を翻していた妖精のシア…


 妖精の履いていたお洒落なモスグリーンのショートブーツ…そのブーツが…ウチのベランダに転がっていた…


「馬鹿だなぁ…シンデレラのつもりかよ…」


 俺は細くて拙くてほつれたシアとの心の繋がりを残したまま…激動の高校3年を迎える。





※ゆっくり更新ですいません

 


 



 




 

 



   

  


 

 


 


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