第四試合
チームレジェンズ対チームルーザー 4
『皆様、大変ながらくお待たせ致しました。波乱の展開で終わった第三試合から一時間! 新ステージが完成したぜ!』
殺風景だった古戦場から一挙に変わり、フィールド中央に作られた巨大な円形のステージ。
さながら、演奏を行なうステージを思わせる木製のフィールドは、チームレジェンズを知る観客席の人間らにある人物の登場を予感させた。
『さぁまずは! 数年ぶりの黒星を付けられ、常勝の二文字に泥を塗られたチームレジェンズより、こいつの登場だぜぇ!』
会場全体の灯りが一挙に消灯。
直後、チームレジェンズの入場口を四つのスポットライトが照らす。
漆黒の入場口よりヒールの甲高い音を鳴らしながら現れた男の存在に、観客席は歓喜した。
『万能! その言葉は、この男にこそ相応しい! 彫刻、絵画、建築。あらゆる創造物を世に生み出し、哲学者として名を馳せるに留まらず、飽くなき探求心と、尽きる事のない独創性で、未来をも描くに至る! 万能にして天才! 奇跡の体現者……レオナルド・ダ・ヴィィィンチィィィッッッ!!!』
ヒールブーツを鳴らし、両手には特性のガントレット。背中から生える四つの義手を備えた好青年――レオナルド・ダ・ヴィンチ。
勝率百パーセントの無敗記録保持者を、チームレジェンズは万感の思いで繰り出して来た。
「やっぱりレオナルドか……」
「想定通り。問題は、奴がどこまで通用するかだ」
『そして! チームレジェンズに泥を塗った無名の敗者――否! 常勝に喰らいつくダークホースとなり得るチームが繰り出すは、こいつだぁ!』
レオナルドの登場と同様、スポットライトが入場口を照らす。
が、そいつはなかなか出て来ない。
代わりに静寂を突き破るバイオリンの音色が聞こえて来て、その美しさはザワついていた観客席を一挙に黙らせた。
そうして完全な静寂を自らの奏でる音色で支配した男が、ようやく姿を見せる。
呆けていた実況は我を取り戻し、紹介の向上を読み上げる。
『天才! 親は誰しも、子の成長に夢描く。男は親の期待に応え、あらゆる名曲を世に遺した! しかし! しかし! 奇しくも最後に掻き上げたのは己が鎮魂歌! その横暴さ故、妻を世界三大悪女とまで呼ばせた、鬼畜天才変態音楽家! 親に愛され、死神に愛された男!!! アマデウス! モォォォツァルトォォォ!!!』
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。
世界でも名だたる短命の音楽家が、仮面をつけて現れる。
鋭利かつ長く伸びた爪。黒衣のマント。漆黒を纏ったその姿は、人々にかの怪人を想起させる。
相場数十億は下らないストラディバリを客席へと抛った男が、音楽を愛しているとはとても思えなかった。
ニタァ、と嗤うモーツァルトの目が狂気を孕む。
「さぁ、キミの鎮魂歌を奏でてあげようか」
対してレオナルドはまた屈託のない笑顔を返しながら。
「誰に向かって言ってんだ。殺すぞ? 変態仮面」
『さ、さぁ! 両雄揃いました! チームレジェンズ対チームルーザー! レオナルド・ダ・ヴィンチ対、アマデウス・モーツァルト! ……
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