第三試合終了

幕間 2

 第三試合終了にして、チームレジェンズ、まさか、まさかの黒星。

 過去行なわれた転生者大戦において、チームレジェンズが黒星を付けられたのは、数年前の結成当初、初試合のみ。

 数年――正確には、九年と六か月間もの間守られ続けて来た常勝無敗の記録が今、破られた。

 誰が予測出来ようか。

 観客席の中に、チームレジェンズの全勝で賭けていない者など皆無。皆が項垂れ、絶望し、高額な賭け金を失った事への無念に苛まれる。

 そして金銭関係なしにして、チームレジェンズ監督のポラリスは、テーブルに置かれていたありとあらゆる物を引っ繰り返し、床へとぶちまけていた。

「このまま……このまま終わると思わない事です! チームルーザー! 次は絶対に、絶対に……あぁっ! あぁぁぁっ!!!」

 荒れるポラリスとは対照的に、光が見え始めたチームルーザー監督室は、南條の笑い声が止まらなかった。

 隣でも、安心院が言葉にならない嬉しさを噛み締めている。

「やった……! 遂に、遂に一勝! やったぁ! ブーディカぁ!」

「ケッケッケッケッ! 正直ヒヤリとはしたが、やってくれたぜ」

「本当だよ! あのチームレジェンズから一勝をもぎ取ったんだ! これは大きな一歩だよ!」

「だが、喜ぶのはまだだ。まだ、俺達は奴らにリードを許しちまってる。次の一戦でイーブンに持って行って、そこからようやく本当の勝負だ。圧倒的勝者の、はらわた抉り出すぞ!」

 両者共に、熱が籠る。

 その頃同時刻、会場裏。

 己が過去でも最強にして最高の叛逆者の勝利を、ローマの皇帝ネロは何とも言えない気持ちで見届けていた。

 ブーディカが叛逆した時代、ローマを治めていた皇帝として、彼女の勝利を祝福していいものかどうか困ってしまう。

 スパルタクスは敗北したものの、今後チームルーザーとやり合うような事があるのなら、彼女の事は警戒しておかねばなるまい。

 ネロを除く他の皇帝は彼女を軽視していたが、これでブーディカという女傑の存在を改める事が出来ただろう。

 ネロが所属するチームインペラートルが、今後彼女と当たらぬ事を祈るばかりだ。

「ブーディカが勝ったなぁ。嬉しいか?」

「――?!」

 気配なんて微塵も感じなかった。

 気付いた時には肩を組まれ、絡まれていた。

 同時に気付いた脇腹が焼かれるような鈍痛によって、体から脂汗が噴き出してくる。

「今後チームルーザーがぶつかる事がなければいいなぁ。まぁ、それより先におまえは死ぬがな? 悪いなぁ。私個人としては恨みも何もないんだが、これも仕事でなぁ。何より相手が皇帝だと言われると、躊躇する理由が全くなくて困る」

「貴、様……一体、何者……」

「ローマ皇帝ネロ・クラウディウス。おまえが一体何代目か知らないが、私は根源にして始まりとさえ呼べる皇帝を知っている。おまえとは比べ物にならぬ男を、な」

「舐めるな!」

 ネロの異能。

 同じ相手に三度殺されても蘇る。

 つまりネロを殺すには、彼を四度殺さねばならない。

「噂に聞いていた蘇生能力か……しかし何、すぐに終わらせよう。皇帝、王と呼ばれる全てはこの私――いや、せつの獲物でありますれば……くひっ」

「抜かせっ!」

 第四戦開始まで、あと一時間。

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