第三試合

チームレジェンズ対チームルーザー 3

 戦場一新。

 あちこちに剣や槍、矢などの武器が突き立った古戦場のような姿に変わった戦場が、観客の前に姿を現す。

 第一、第二まででは見られなかった地形を利用してでの戦いも見られるだろうかという期待を膨らませる観客の前に、実況が現れた。

『さぁ! 大変お待たせ致しました……第三試合会場となりますはご覧の通りの古戦場。これらの武器、武具の扱いも自由! まさに戦場での戦いが繰り広げられるのです! では早速、第三試合の出場者を紹介しましょう! 三連勝を目指すチームレジェンズの代表は、この人だ!』

 鳴り響く蹄鉄の音。

 灯り一つない通路を疾駆するそれは一見宙に浮いているように見えたが、入場ゲートから戦場の中央付近まで跳び込んで来た巨大な影が漆黒の黒馬だと気付くと、その背に乗っていた白髪の姿がより映えて見えた。

『世界屈指の女傑は誰か。百年の戦争を終結に導いた聖女ジャンヌ・ダルクか?! 敗戦しながらもウォリアー・クイーンと呼ばれた戦場の女王、ゼノビアか?! 否! 否! 否! 忘れてはならぬ! 日ノ本にもいるではないか! 唯一無二、天下無双の女武者! 世界屈指の無敵の女傑! 一騎当千! 天下無双!』

 馬より降りた女は、背負う漆黒に手を伸ばす。

 開いて見せたそれは、自身の背丈よりも巨大な強弓。

ともえごぜぇぇぇん!!!』

 会場全体が、再び沸点を超える。

 チームレジェンズ屈指の人気度。それを有するに至った彼女の実力は、チーム内でも屈指だ。

 今度も目指すは確実なる勝利。当然の勝利だ。

『対して! 無謀にも常勝のチームレジェンズに挑み、絶賛二連敗中のチームルーザーからは、この人だぁ!』

 再び聞こえて来る蹄鉄の音。しかし今度は八つ。

 二頭の白馬が引いて来たのは、巨大な車輪ホイールを回す戦車チャリオット。その真ん中に立つ髪は、夕暮れの如き真紅で燃えている。

『人は言う。勝利の女神が微笑んだと。勝利の女神が微笑みし時、勝利は約束されたのだと。今ここに現るるは、女神にして女神に非ず! 祖国の侵略、鞭打ちよりも、娘達の恥辱と凌辱にこそ憤怒せし女傑にして、復讐者アヴェンジャー! 女神アンドラスタは、常勝のチームを敵にして微笑むのか! 入場する! 微笑みを忘却せし、勝利の女神!!!』

 停車せし戦車から跳躍。着地せし女傑は、抜いた剣を突き立て眼前を睨む。

『ブゥゥゥディカァァァ!!!』

 スパルタクスに続き、ローマと因縁深き英傑が一人。

 アーサーのように熾烈な最期を遂げた訳でも、レオニダスのように最期を戦士で終えた者でもない。最後の戦いにまで勝利を収め、九一年の長寿を遂げた生涯の勝者。

 圧倒的勝算を誇る女傑に、復讐の女王が挑む。

『さぁ、両雄揃い踏み! チームレジェンズ対チームルーザー! 巴御前、対、ブーディカ! ……開戦ファイッ!!!』

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