エピローグ

 101号室。


「ただいまー」

「おかえりなさい」

「今日も嫌になるくらい働いてきたよ……仕事の押し付け合いなんて勘弁して欲しいよね」

「仕事、大変なの?」

「いや、大変だけど給料貰えるし、割と休みもあるからねぇ。文句ばっかり言っても始まらないよ。とりあえず休憩ってことで」

「……ねぇ、教室って狭い世界だったよね。井の中の蛙、大海を知らずってやつよ」

「いつの話してるの? それに、蛙は海に出れば浸透圧の影響で死んでしまうよ」

「もう、ちょっとした例えだよ、例え。……大海に出たけど、何とか生きていけるね。生きていけちゃうんだよなぁ」

「人は、そういう生き物だと思うよ」

「ま、そうね。冬眠して冬を越すことだって出来るし」

「それは蛙」

「お、唯奈ナイスツッコミ」

「……だから、心細い私は遙華はるかと大海へと赴いた」

「あの、されど空の青さを知るみたいな、その……恥ずかしいから、なんか言ってよ……や、急に抱きつかないで」

「だって、心細いんでしょ? ほらほら、温いでしょ」

「知ってるよ、痛いくらいにね」

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瞳の中のひまわり サトウ @satou1600

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