Case 10ー1 わたし
私の周りには、難しいタイプの女がいっぱいいるよな~って思っていた。
だけど、本当に難しいのは私自身なのかもしれない。
もう50になると言うのに、いまだに、自分自身のことがよくわからない。
子どもの頃、いろんな物に興味があった。
その1 歴史が好きで、古墳とか遺跡とかの発掘や研究をする人になりたかった。
その2 花が大好きだったので、花屋さんか花農家さんになりたかった。
その3 本が好きだったので、本屋さんか、図書館の司書さんになりたかった。
その4 走ることが好きだし、足が速かったから、マラソンランナーとかになりたかった。
その5 色白で指が細くて長いから、みんなに手だけはよく褒められた。手のパーツモデルになれるよ!!って。
背も高くないし、モデルは無理だけど、手のパーツモデルならなれそうな気がした。
そんなふうに、やりたいこと、なりたいものがあったのに、私はそれを他人には言わなかった。
身内にも言わなかった。
小学校の卒業文集には、将来の夢の欄に
“”銀行員“”
と、書いている。
なんでそう書いたのか?
うちの親は、銀行員ではなかったけど、親戚の伯母さんが何人か銀行員だったから、具体的な職業として思いついたのが銀行員だったのかもしれない。
“”銀行員になりたい“”
と、書くことが親に対して、ベストアンサーだと思ったのか。
『現実離れした夢』ではなく、『現実的な夢』
小学校の卒業文集に現実的な夢を書く必要なんてまったくない。
プロ野球選手、歌手、女優さん、〇〇でオリンピックに出る!、宇宙飛行士、とか、それは子どもが子どもらしくデッカイ夢を大風呂敷を広げていい場なのだから。
なのに、“”銀行員になりたい“”と書いた私は、なんてつまらない冷めた子どもだったのだろう。
本当に夢みていた その1からその5を書き連ねるくらいすれば良かったのに。
自分の胸の内を、さらけ出すことは まったく なかった。
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