Case 9ー2 美和

 美和は、住み込みバイトを辞めて、実家に帰ってきた。

左手のじん帯を切った大怪我の割りには、普通の生活をおくるのに さほど問題ない感じで良かった。

リハビリ的なことで通っていたお医者さんから、ヘルパー求人があるからと言われ、訪問介護の補助的な感じでやり始め、それをやりながらヘルパー3級の資格を取った。

3年くらいヘルパーの仕事をやりながら、本人いわく 初めて猛勉強をして、看護学校を受験し、みごと合格して、看護学校に入学した。

その時すでに29歳。

その頃、私は2人の子育てに忙しかったし、あまり美和と話をすることがなかったから、我が妹ながら、いったい何を目指しているのか、まったくわからないって感じだった。

美和の周りの友達も、結婚したり、子どもを生んだりしているような感じだったのに、なんで今から看護学校なの?

いろいろと聞きたいし、意見したい気持ちもあったけど、それは美和が決めたことで、どう生きるのかは、人それぞれだろう。

あの時反対されたから諦めたけど、本当はやりたかった……なんて、言われても嫌だしな。


 今、美和は47歳、独身。

看護師としてバリバリ働いている。

姉妹として同じ両親に同じように育てられたのに、こうも違う人生を生きるとは思わなかったな。

結婚は、まぁ50でも60でもお相手が見つかれば、いつでもできるだろう。

だけど、出産は、もうこの年では、無理だろう。

それも、美和が自分で決めた人生だ。

それを私が、かわいそうとか思うのは違うだろう。

自分の時間を、自分の為に使うことが出来る。

よっぽど幸せなことなのかもしれない。


 私が、美和に口を出さないのに、美和は私の子育て方針や、息子たちにやたらと口を挟んでくる。

顔を見れば、もっと勉強しろ!!って。

うちの子たちからしたら、口うるさくて、めんどくさい伯母さんと言う感じだろう。

自分は子育てしてもいないのに、うるさいよ!!と、私も心の中では思いつつ、今日は息子たちにお年玉を有り難く戴いてきた。

ありがとうございます。

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