Case 6ー2 飯田さん
謝罪に来いって、言われたのは初めてだったから、だいぶ緊張した。
“”謝罪に来い!!“”とは言ってないか。
“”謝罪に来ていただきたいとのことなのですが……“”
と、担任に言われただけだ。
でも、先生のなんとも言い難いというような、あの言い方は、それなりの覚悟で行かなくてはと思った。
お菓子屋さんで、お菓子を箱に詰めてもらい、菓子折りを持って、息子と飯田さんのお宅へ伺った。
息を整えてチャイムを押した。
数秒後、はい、と ドアが開き、ママさんらしき人が顔を覗かせた。
「佐藤です。この度は、うちの子が かりんちゃんにおケガをさせてしまったようで、申し訳ありませんでした」
そう頭を下げたが、ムスっとした顔つきで、こちらをにらんでいた。
「かりんちゃんに、直接謝りたいのですが」
「うちの、かりんちゃんは大人しい子だから、お宅のお子さんみたいな乱暴な子とは、関わらないようにって言ってるんですけど」
乱暴な子だと?
カチンときたけど、とりあえずは、謝罪
「おケガの具合いは、どんな感じですか?お医者さんには行かれましたか?」
「はぁ?」
すごく不機嫌そうな顔をした。
「うち、薬局なので」
薬局なので…………なんだ?
うち、医者なので、なら、まだわかる。
薬局だから、なんだってんだ?
つまり、医者には行っていないと言うことのようだ。
「あ、飯田薬局さんでしたっけ?わたし、旦那さんと同い年で、クラス一緒になったことは一度もないんですけど、飯田まさおさんて優秀な方だったと覚えてます」
「えっ?
佐藤さんて、都会から引っ越してきたんじゃなかった?」
「あ、はい。横浜から一家で引っ越してきました。主人が田舎暮しがしたいって言うので、まんざら見ず知らずの土地よりも、わたしの故郷へって。わたしは、元々ここの人です」
「そうだったんだ~~!!知らなかった~!
うちの旦那と同い年なら、私も同い年よ~!私の実家は、徳島なんだけど。
私、こっちには友達もいないから、仲良くしてくれる?」
手のひら返し!!
見本のような、見事な手のひら返しだった。
ケガというのも、転んでヒザを擦りむいた程度の話だった。
人を選んで攻撃するタイプなのか。
都会から引っ越ししてきた人
って、気に入らなかったのだろう。
飯田さんちは女の子2人、うちは男の子2人。
上も下も、同い年だった。
かりんちゃんと、妹の もえちゃんも、玄関に出てきて、輔くんのお母さん、パパと同級生だってー!!って、飯田さんはキャッキャと喋った。
子どもたちも同い年だし、奇遇ね~!!
仲良くしましょ~!!
とりあえず、話が無難に済んで良かった。
でも、わたしは、こうゆうタイプの人とは、仲良くは なれないな。
そうは言っても、上も下も同い年だったら、学校の行事とかでも顔を合わせることもあるだろうし。
まぁ、表面上うまく おつきあいしていこう。
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