Case 6ー3 飯田さん

 長男は6年生、次男が1年生になった冬。

田舎なので、私立の中学へ進学する人は 1人か2人。

県立の高校の附属中学校を受験する人も、数人という感じ。

ほとんどの人が、何も考えず当たり前に、地元の市立の中学へ進む。

Y高校の附属中は、5人受験して全員落ちたと聞いた。

Y高校は、この辺りでは1番偏差値の高い高校。

長野県の中でも、3位の高校だ。

附属中学に入れれば、そのままエスカレーター式にY高校に進学出来るから、どうにか入りたいと思っただろう5人が受験して、落ちた。

うちも、Y高校が志望校。

でも、附属中は受験しなかった。

中学は、地元で、小学校からのお友達と仲良く楽しく過ごしてほしいと思っていた。

小2で横浜から転校してきて、やっと仲の良い友達が何人も出来たのだから、中学もその人達と一緒がいいと本人も望んでいたから。

だから、附属中の受験はまったく視野に入れてなかった。


小学校の卒業式間際になって、飯田かりんちゃんが附属中に受かってたんだって!と言う話を聞いた。

受かってた、と、いうより、繰り上がったんだと思うけど、うちの小学校から、附属中に進学したのは かりんちゃん1人だけだった。

そのことで、飯田さんは天狗のように鼻たかだかという感じだった。

中学は別々になったけど、下の子が小学校で同じクラスになったから、学校行事や懇親会の飲み会なんかで、飯田さんと顔を合わせることも多かった。


「もえちゃんち、おねえちゃん、すごい頭いいんだってね~!!附属中受かったの1人だけだったんでしょ?すごいよね~!!」

なんて 他のお母さんに言われて、

「そうなの~!!みんな落っちゃってね~!

知ってる子 誰もいないから寂しいよ~!!」

って笑ってた。


は?そうですか。

ま、マウントとりたいんだろうけど。

でも、ウザいな……



 3年後

高校の合格発表

うちの子は、Y高校に合格した。

同じ中学から8人合格した。

みんな、優秀な子たち。

ちょうど、3月に小学校の担任が異動になるということで、送別会の飲み会があった。

「輔くん、高校どこ受かったの?」

と、飯田さんに聞かれた。

「Y高校 受かったよ。

高校で、また かりんちゃんと一緒になるから

よろしくね~!」

と言ってみた。

すると、飯田さんはニコッとして、

「あ、でも、附属中あがりの子と、一般生はクラス一緒にはならないからさ~!

カリキュラムが違うから~!」

あははっと笑った。


何がカリキュラムが違うからだよ!

附属中あがりがどんなもんか、楽しみだな!


 高2になった時、クラス替えがあり、新しいクラス名簿が配られた。

附属中あがりの子たちは、1組、2組。

そこを見てみたけど、かりんちゃんの名前は なかった。

知らなかったが、1年の時から、不登校気味になり、2年に上がれず退学したそうだ。


そもそも、かりんちゃんのレベルでは無理があったのだろう。

お母さんの為に頑張っていたかもしれないけど、キツかっただろう。






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