Case 5ー1 典江ちゃん

 中学生の時に初めて好きになった男の子がいた。

当時の私は、人見知りで、引っ込み思案で、男子と話をするなんて まったくなかった。

初恋の相手は、村田くん。

中1の時は小柄な子だった。

160センチそこそこ。

成長期でぐんぐん伸びて、中学を卒業する頃には176センチにもなっていた。

私は、背が高い人がタイプだったから、好きになった時の村田くんは小さい人だったのに、どこを好きになったのかな?って、自分でもよくわからなかった。

同じクラスの村田くんを見ているだけで、毎日が楽しかった。


バレンタインデーに、勇気を出して告白しよう!!

そう意気込んでチョコを持参したけれど、陰キャな私は、結局 告白することはできなかった……


バレンタインデーのすぐ後、村田くんに彼女ができていた。

典江ちゃん。

小さくて、女の子らしい子。

私は部活が一緒だったから、典江ちゃんと村田くんが話をしているところを、目撃することが多かった。

にこにこして話している典江ちゃん。

かわいいけど性格悪いとか、かわいいけど超バカとか、そんなマイナスポイントを探そうとしたけど、典江ちゃんは同性からも好かれる いい子だった。

絶対に負けないから!って、闘士むき出しにはなれなかった。

そもそも2人にとって私なんて、ノー眼中だ。

私は、村田くんを好きだという素振りさえ、見せることはなかった。


部活の時に、他の女子の子が典江ちゃんに質問していた。

「のんちゃんと、村田って、どっちから告白したの?」

それは、私もすごく聞きたい質問だったから、マジで聞き耳立てた。

「どっちってゆうか、う~ん……同時に、かな?」

んなわけあるかーい!!

心の中で叫んだ。


部活中、典江ちゃんと対戦したことは何度もあったけど、私は1度も勝てなかった。

勉強も、典江ちゃんはいつも上位で、私は中の中って感じ。

典江ちゃんはすべてが、私よりも優っている人って思っていた。

中学時代、私は2人のラブラブぶりを ただただ見ているだけの人だった。


2人、ケンカでもしないかな?

別れたりしないのかな?

そんな風に考えてしまう自分がつくづく嫌になった。



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