Case 4ー1 麻子

 大学を出て、新卒入社した会社の同期の麻子。

私が今まで出会った人の中で、この人はダントツの美人だった。

芸能人みたい。

私よりも10センチくらい身長も高かったから、

170センチくらいだったのか。

痩せていて、スラーっとしていた。

髪も長くて、モデルさんか、女優さんかみたいな感じだった。


同じ支社に配属されたのは、5人だったから、一緒に飲みに行ったり、休日に遊びに行ったり、

とにかく5人でつるんでいた。

地方なので、通勤は有無を言わさず、マイカー通勤だ。

軽の車が大半の中、麻子は、ワンエイティー180に乗っていた。

ワンエイティーから、颯爽と長身の美人が降り立つのだから、すごく目立っていた。

会社の駐車場から、社屋まで5分くらい歩くのだけど、その5分間にナンパよろしく、声をかけられると言う。

「車好きなの?一緒にドライブ行かない?」

朝からうっとうしいと、ボヤいていた。


入社して、2、3ヶ月は、同期で遊びに行っていたけど、そのうちに、ごめん、用事ある。と言うようになった。

その用事ってのは、デートだろう。

ま、そりゃそうだよね~って思っていた。


夏が過ぎた頃、ワンエイティーに変化が起きてきた。

私は車にあんまり興味ないから、あんまりわからないけど、ウイング?という物をつけた。

ガラスにスモークをはった。

車高を低くした。

なんか、一言で言うと、族車みたいな、走り屋の車になっていった。

で、極め付きに全塗装して色を塗り替えた。

元々は、ネイビーだったけど、メタリックブルー?メタリックネイビー?メタリックパープル?

とにかく、メタリックカラーだから、日の当たり方で、いろんな色に見える。

これは、新卒採用の女子社員がやることなのか。

駐車場では、レースクイーンとの撮影会みたいに、車と麻子を写真におさめたい輩が何人も集まるようになった。

サラッと聞いただけだったけど、ざっくり300万円と聞いた。

実家暮らしとは言え、入社1年目の女子社員が払える額ではなかった。

車屋さんの彼氏が何人かいて、それぞれタダでやってくれていたらしい。

麻子とつきあえるのなら、これくらいは朝飯前って男が何人もいたんだな。

でも、そんな “”みんなの麻子“” には、限界がある。

ウイングの男と、塗装の男がもめて、金払えみたいになったのだと。

麻子に払えではなく、男同士で もめて、結局塗装の男がウイングの男に、ウイング代を払ったそうだ。


いや、ちょっと引くわ~~!!

と、思っていた。



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