Case 3ー2 中谷さん

 初めて話しかけられてから、文化祭や、コンクールなどで顔を合わす度に、話をするようになった。

こちらも、相手が誰だか わかったから、やっと同じ土俵に立てた感じ。


まず、うちの息子は、無口な子で、基本あまり学校のことも話さない。

男の子の友達の名前は出ても、女の子の話題が出ることは滅多になかった。

だから、小学校が同じだったけど、クラスは一緒になったことがなかった実希ちゃんの名前が、息子の口から出ることは今までなかった。


「吹奏楽部のクラリネットの実希ちゃんと話すことある?」

と、息子に聞いてみた。

「たまに、話すよ」

「なんの話するの?」

「なんの?あ、テストの話とかかな」


テスト!!

やっぱ、実希ちゃんからお母さんに話しが漏れてるんだな。


「いつも、いつも点数聞かれる」

「は?それで教えるの?自慢みたいじゃん!!」

「え?実希の方が、俺より頭いいよ」


マジか!!


「この間のテスト、輔は3位だったじゃん!

実希ちゃんは?」

「2位だって。ってか、いつも2位だな。1位の伶奈はぶっちぎりだから」


は?

ってことは、今回のテストの順位が3位だった

うちの子のことをけん制してるのか。

いつも、いつも聞かれるってことは、入学したばかりにやったテストが10位、一学期の中間テストが7位、期末テストが5位だってことも知ってて、上がってきてることへのけん制か。


「あんまり人に点数なんて言わない方がいいんじゃないの?」

「なんで?聞かれたのに言わないのも、感じ悪りーじゃん」


ふーん。

そっか。

ま、本人が嫌じゃないのなら、まぁいっか。


私は、息子の友達 誰が成績がいいのかとかも全然知らなかった。

それほど興味もなかった。

だけど、実希ちゃんのお母さんは、人の成績がすごく気になる人だった。

私の顔を見ると、早速そんな話をしてくる。

〇〇くんが、今回のテスト良くて何位だったって。

〇〇ちゃんが、今回悪くて、とか。


中谷さんの興味は、友達の成績だけではなく、

〇〇くんと〇〇ちゃんがつきあってるんだって。と言う話にまで及んでいた。


へ~~~~そうなんだ~~ って感じ。

この情報を中谷さんに与えてるのは、実希ちゃんだろう。

実希ちゃんは、すごく静かで大人しい性格の子。

その実希ちゃんが、これだけの情報を聞き込みしてるのか?

なんか意外すぎる。

〇〇さんの情報を仕入れてきなさいよ!!って、

お母さんにプレッシャーをかけられてるんじゃないのかな?

大丈夫かな?

心配になった。

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