Chase 10 Chika side すると、御来客現れり。


 ――そしてベルの音、高鳴れり。遠くまでこだまを引くように。



 先刻の夢から、ようやく胸の高鳴りが治まった僕は、玄関のドアを開けた。本日二人目の訪問者。一人目は太郎たろう君。二人目ももちろん知っている子。その子もまた、


梨花りかいる?」……だった。太郎君もだけど、何で梨花ばっかなの? 僕はついで? 溢れそうなその声は、胸の中だけに収める。お顔は、あくまで笑顔で……と、思っていると、


「大丈夫。千佳ちかにも用事があったから。

 ……ほら、差し入れ。太郎君もいるんでしょ。たこ焼き、皆で食べよっ」

 という具合に、可奈かなはお見通しなの。


 ……何もかも。僕が梨花にヤキモチ焼いていることも、もしかしたら。でも、そのことには一言も触れずに、『夫の用事』ならぬ『爪楊枝』で、僕のお部屋、太郎君も一緒に三人で突き合うホクホクなたこ焼き。とっても美味しく頂く次第となったのだ。



 お腹も満たされたところで、


「ところで何の用だったの?

 梨花は、すぐには帰って来ないと思うよ。何かイベントがあるらしいから」

 と、僕が言うと、可奈の表情は急変して、


「きっと楽しく遊んでるんだわ、あの派手派手女と。東の都の渋い谷だか、原の宿だか知らないけど、アーバンスタイル気取ってさ。勝負してやろうと思ってたのに」

 と、言い放つけど……


 何の勝負? と、僕には理解できずで……


 何となくだけれど、マシンガントークなら可奈に敵う者はいないような気がして、無敵を誇れるとは思えるのだけれど……それじゃ不十分? と問う。届かぬ声をもって。


 囁く程度のその様な声。僕も太郎君も。


 それ以上は二人の問題。……いや、梨花と可奈、そしてもう一人の三人の問題かも。



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