第4話 お宝
「おお! これがダンジョンか。でっけえな」
目の前には、いびつな形の大きな塔がそびえたっていた。
奥行きもかなりあるため、中々に楽しそうだ。
「じゃあ行ってみるか。王国の連中もさすがにダンジョンの中までは追ってこねえだろ。そもそも誰にも行先伝えてねえし」
両開きの扉を開け、中に入る。すると自然と扉は閉まり、暗いはずなのにやけにものが見えた。不思議な感覚だ。
すると目の前に、骸骨やらを被った、黄緑色の人型のモンスターが三体現れた。恐らくゴブリンと呼ばれる奴らだ。
「最高だぜえ。まさかドラクエをリアルで体感できるなんてなあ」
俺は兵士から奪った剣を引き抜く。一人目の剣が壊れてしまったので、これが最後の武器だ。
「しゃあ行くぜっ!」
剣を両手に持ち、ゴブリンたちめがけて突進していく。
ゴブリンたちは槍と斧と弓を持っている。
まず弓を持っているゴブリンに狙いを定める。理由は近距離が苦手そうだから、というだけだ。
サクッと倒して終わるつもりだったが、妙なコンビネーションにてこずった。
弓を狙えば、斧の奴に剣を止められ、後ろから槍の奴に攻撃される。
「あああ! クソうぜえ」
仕方ない。スキルを使おう。
と、考えたが、同時にいい考えも思いついた。
こいつらの武器奪っちまえば、俺もスキルで強化できてこいつらも簡単に殺せて一石二鳥なんじゃねえの?
そうだ、なんでそこに気付かなかったんだ。よし、じゃあ狙うべきは手だな。もしくは腕だ。
矢が飛んでくる。それをかわし、斧の奴に近づく。そして一気に剣を振り下ろしぶつける。
すると斧が弾かれ、ゴブリンは体勢を崩す。
「もらったあああっ!」
ゴブリンの右手に剣を突き刺した。
「ぐぎゃあああああああ!」
と、その直後に後ろから槍が突き出される。
反応が遅れ、体にかすり血がにじんだ。
「痛ってええええ」
ここで俺は剣を強化し、思い切り槍のゴブリンの首をはねとばした。
勢いそのままに、斧のゴブリンを両断する。
血が飛び散るが、お構いなしに次の標的を狙い定める。
「あとはお前だけだな」
強化され、黒く変色した剣に赤くひびが入る。そろそろ限界だろう。
という訳で、剣を槍のように弓の奴に向けてぶん投げた。
それを迎え撃つかのようにゴブリンの矢が放たれる。すると剣は矢を半分に空中で切断し、ゴブリンの心臓を一突きした。
剣はゴブリンの肉体を貫通し、後ろの壁に突き刺さる。その衝撃で、剣は粉々に割れ、地面が微かに動いた。
「初戦闘勝利記念ってことで武器はもらってくぜ」
斧、槍、弓を回収し、散乱している矢も全て拾い集める。
武器を回収し終えた後、辺りをうろついてみる。
もしかしたら宝箱があるかもしれないからな。城の兵士からもらった金銭もどれだけもつか分からないから、多めにあるに越したことは無い。
「お宝お宝~……おっ、宝箱見っけ」
するとそこには、金色の装飾が施された宝箱が隠されてあった。
「これ普通に開くのか?」
重厚なつくりに反して、意外と簡単に開いた。
「中身は―……空……」
中には何も入っていなかったのだ。
だが初めから何も入っていなかったという訳でもなさそうだ。
俺より先に来た奴がいるのか……?
だが俺は、最近できたダンジョンだと聞いてきたのだ。お宝が無いのなら、わざわざ新しいダンジョンに来る必要も無かった。
「クッソォ! なんにもうまくいかねえな俺の異世界生活は!」
俺は誰に言うでもなく、その場で上に向けて叫んだ。
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